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琉球検察




沖縄県が復帰して今年で40年。米軍軍政下で沖縄独自の立法・行政・司法機構があったことも、もう忘れられつつある。本書は、その琉球検察のトップ・検事長を20年務めた比嘉良仁氏と、公安部長だった高江洲歳満氏の証言を中心に、琉球検察のハイライトである、コザ暴動と本土返還に検察がどう対峙したかを記録している。驚くような話、興味深い話がいくつもあった。

本土返還2年前に起こったコザ暴動を記憶する人の多くが、「米兵が日本人を車ではねた事故の処理に怒った集団が暴徒化した。コザでは住民と米軍が一触即発の状況だった」という概要で理解している。しかし、「首謀者はいた。背景に瀬長亀次郎もいたのではないか」と琉球検察は見ていた。瀬長は、戦後沖縄復帰運動の大立者だ。暴動は妙に秩序だっていた。瀬長は日本本土にいて、翌日コザを訪問していてアリバイがある。だが、偶発的な暴動にしては手際がやけにいいではないか、計画された暴動ではないか。ということだ。「騒乱罪」の適用を検討したが、見送った。適用したら瀬長逮捕になる。もう反米運動の火に油を注いでしまう。本土返還が決まっている以上、アメリカの統治は限界で、騒乱罪適用で沖縄が混乱しても、当事者でもある米軍の介入は期待できない。かつ、瀬長の影は見えるが、裏が取れない。高江洲は、騒乱罪不適用を具申した。比嘉も是とし、「酔っぱらいが暴れた」という曖昧な決着になった。沖縄政治という大局を見ての判断だった。

そもそも琉球検察自体に反共意識が少なかった。トップの比嘉自身が琉球独立論者で、反米意識も、本土への帰属意識も薄い。そんな比嘉が検事長になったのも、戦後の沖縄で法曹資格を与えられ、弁護業務をしたらやたらと無罪を取ってしまうので、米軍にスカウトされたという。驚くべき経歴。比嘉という人物は不思議な人物だ。琉球空手の達人でもあるが、「相手が向かってきたら逃げますよ」と冗談めかして言うが、時には後援者の起訴に異議を唱えた行政主席にやり返すほどの気骨で、法秩序の維持に心血を注ぐ。しかし比嘉をもってしても、コザ騒動で騒乱罪は適用しなかった。コザ騒動は沖縄にとって、これほど大きな出来事だったのだ、と本書を読んで感じた。

本土復帰時の沖縄法曹資格の取り扱い協議も、「柔よく剛を制す」比嘉らしい交渉ぶりだ。「本土の法曹資格を持たなければ、法曹資格を与えない、本土資格取得には筆記試験を課す」とする本土の法曹関係者。しかし、沖縄全体で日本の法曹資格を持つのは16人。全員弁護士だ。司法関係者は職を失う。強烈な危機感を胸に、比嘉は日弁連と激しくやりあい、一定の資格を満たせば、「特措法により、面接で資格を授与する」とした。比嘉の秘蔵っ子として、琉球検察のエースである公安部に長年属した高江洲は、復帰後、沖縄法曹の誰もが嫌がるわいせつ容疑の米兵弁護をたびたび引き受け、嫌がらせも受けてきた。受任する理由を語る「事実の積み上げがすべてだから」という言葉に琉球検察のエースたる気骨を思わせる。

沖縄世論のパワーを、今までの自分は過小評価していたように感じた。本書を読んでいると、アメリカは終盤、統治を重荷と感じ、日本に下駄を預けていたような印象を持つ。そして、沖縄ではもはや独立論が公然と語られる状況だ。出来るかどうかはともかく、普天間基地の県内移設は妥当だと個人的には見ているが、移設は永久に出来ないのではと感じた。それどころか、独立までいかなくとも、遠い将来、非常に大きな自治権を与えることになるかもしれない。消滅した組織を追う過去の物語だが、沖縄政治の底流、複雑さ、そして将来の展望までも匂わせる良書だった。99歳の比嘉氏、78歳の高江洲氏。どちらも非常に貴重な証言で、200ページ超の分量で物足りないくらいだ。
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ここは酷いコザ暴動ですね

琉球検事―封印された証言東洋経済新報社 七尾 和晃 Amazonアソシエイト by 沖縄の司法システムの話とその日米との違い そしてコザ暴動の意味深過ぎる結末 そして本土復帰における特別措置の話 まずは沖縄は王朝時代から琉球科律というものがあり 理念として性善説に基づいた体系が作られていた 沖縄戦後、アメリカ軍の統治下になるのだが なるべく自治を進めるために司法システムが再構...

2014-07-18 00:25 │ from 障害報告@webry

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