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2月の新書オーバービュー


 大阪・西成の「あいりん地区」が日雇い労働者の街から福祉の街に変わっていることを、歴史を踏まえつつ紹介している。身寄りのない人が集中しているため、官民含め福祉サービスが充実している。民間ボランティアは出自がキリスト教系、新左派系、韓国キリスト教系と様々であまり連携はない。ただ、いい面もあって、セーフティネットが多重ということもであり、一つの支援事業が終了したり、関係が切れてたりしても、ほかの網があるということである。

 葬送・追悼行事についての記述が心に残った。高齢者・病人が多く、それだけ死が身近にあるということでもある。ボランティアが行っている事業だが、あいりん地区ではほかの町と違い、仕事や生活の多くを民間ボランティアが主導しているのも印象的だった。貧困の街であり、暴動の街であり、行政と激しい対立を繰り返しながら、住民・支援団体の自治を確立してきた様子が伺われる。

 あいりん地区の話については「経済学者 日本の最貧困地域に挑む―あいりん改革 3年8カ月の全記録」で最近読んだばかりだった。民間だけだと、幅広いコンセンサスが必要な町全体の改編や事業は進まない。今まで一歩引いていた行政が、それまでのあいりん地区の「住民や支援団体を巻き込んで街のあり方を決める」というスタイルを尊重しながら、特区を策定し、街の中心施設・あいりん総合センターの建て替えを決める様子を描いている。




 刑事事件のスペシャリストとして、逆転無罪判決を多く出した東京高裁部総括OBの法廷回顧。「真っ白な無罪だと思って無罪を出したことはあまりない」という記述に驚いたが、やはりグレーでも「疑わしきは……」が原則なのかなと再認識する。検察のストーリーに依拠しない、ゼロからロジックを組み立てる無罪判決は大変だろうし、よくやったなと思う。人が人を裁くのはしんどい。そもそも事件によっては聞いているのもつらい。




 20世紀末から急に見つかりだした太陽系外の惑星の特徴を書いている。最初のころは観測能力のために、主星のすぐそばを回る巨大惑星「ホット・ジュピター」しか見つからなかったが、今はかなり精度が上がり、地球サイズに近い星「スーパーアース」の発見も増えている。太陽系はどの惑星も、同じような円軌道を描いているが、彗星のような超楕円軌道を描く「エキセントリックジュピター」も存在する。

 系外惑星発見までは、惑星学者は自分の住む太陽系にある惑星がすべてであり、太陽系惑星を起点に系外惑星の姿を予想していた。だが、その多様さは我々の予想をはるかに上回っていた。今存在しないスタイルの星は、存在しないのではなく、おそらく観測限界で見えないだけなのだろう、と著者は示唆している。




 財閥系で大を成すに至った事情、伊勢丹・三越のお家騒動、玉塚元一氏からラーメン二郎・ラグビー部まで、三田会コネクションの話題をビジネス誌の特集っぽく書いた軽めの本。幼稚舎が「慶應らしさ」の原点のようで、80年代に日本選手権を制したラグビー部の多くは幼稚舎からの持ち上がりメンバーとのこと。

 幼稚舎はK・E・I・Oの4組にクラス分けされ、K組はオーナー社長の子息、I組は医学部を目指す開業医の子息、I・Oはその他一般組に振り分けられることが多いそうで、閉鎖的かつ仲間意識もそれだけ強くなるのかもしれないと感じる。99年に就任した金子郁容舎長は、縁故の排除を目的とした入試改革を進めたものの、「日本でもっとも売れたアダルトビデオ監督の子息」が01年に入学したことがOBに批判されるきっかけになり、更迭されてしまったという。
 幼稚舎入試では「体操」「行動観察」「絵画制作」が試験内容。絵画は独創性が問われるが、「全裸監督 村西とおる伝 」では、子息が画用紙4枚を使って描いて合格したことが語り草になっているようである。なお「全裸監督」では、子息の合格先は「最難関の名門私立小学校」とされていて明示されてはいない。

 
 今月一番面白かった本は「奨学金が日本を滅ぼす」。高等教育全面無償化は、私は著者と考えが違う。無償化したら、高校を出て働く若者が税を取られる一方で、大学生は税の恩恵を享受できる不公平感が生じるのではないか。大学に行く人間と行かない人間の格差をますます助長しかねない。また学費負担がなくなることでいつまでも卒業しなかったり、無料・低額でインセンティブをつけて優秀な学生を入れている学校(防大・防衛医大・気象大や夜間課程・国立医学部など)の努力が無意味になるなどの弊害が考えられる。

 とはいえ、「低所得層やひとり親家庭で大学に行きたい人に助成する」という考えは正しいというのは本書を読んで理解した。高等教育無償化は首相の改憲方針もあって注目されている分野である。奨学金問題で中心的な立場にある著者の考えが理解できる本だった。
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