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「地方創生大全」を読んで改めて思う「ナントカ活性化補助金」の罪深さ


 あらかじめ断るが、本エントリーは内容紹介や書評・レビューではない。本書を読んで久しぶりに蘇ってしまった、昔の禍々しい思い出についてのメモ書きである。本書自体は語るようなスタイルで問題点を次々と指摘していて、業界関係者には面白い本だと思う。大昔かすったくらいの私でも十分読みごたえがあった。

 著者は地域再生事業に投資・運営する事業家でもあり、情報発信もしている。「新規事業したことない人がビジネスコンペの審査をする」「地域ブランド立ち上げ」「商店街活性化イベント」「どこかで当たったらしい企画」など本書の内容は、商店街や農業の振興業務に関わってると、いくつも思い当たる節があるのではないか。私も10年以上前に、補助金のおこぼれにはあずからないものの、業務でこうした事業にからんでいた時のことを思い出した。いったい何度「補助金出たから始めた」事業を聞いたことか。イベント一回やったところで、その後の検証なんてしない。本来、活性化のための加速器であるべき補助金が、単に消化するだけの金になり、終わると、補助金支給前から一歩も進んでいないという事業が多すぎる。自腹を切らないから、補助金が終れば、利用者の利便など一顧だにせず撤退するか、事業を続けるため、麻薬のように補助金をもらうかしかない。
 
 10年以上前、商工会や農協に「あなた方、補助金がないと新規事業しないのかい」と苦々しい気持ちを腹の底で押し殺しながら、渡辺篤史のように「なるほど~」「ほお~」と相槌をつきつつ話を聞いていたことを思い出す。次第に、補助金をもらい、偉い人に根回しして了承を得るには、成功事例のある事業でじゃないと難しいという、事業者の事情もわかってきたのだが。

 私が仕事していた地域はチャレンジショップや商店街の宅配サービスがはやりだった。1,2年で引っ越すのなら、露店でもいいから自前で店を出したらなあとも思っていた。補助金でおまけサービスや割引販売というのもよくあった。ゲタをはいた店舗・商品が市場経済をゆがめるのを役所の人は理解していない。役所から金をもらうと、役所の指定に合うように仕事を制約されるし、タイミングも逃す。役所の「成功事例」はみんなが真似しているので、先行者に追いつくのは難しい。本書がいうように、自分でいいアイデアだと思ったら、誰が反対しようがすぐ始めた方がいい。

 「産業振興など自治体の仕事ではない。市場経済が成り立たない弱者への福祉・現金給付、環境保護に専念して、経済は経済人に任せた方がいい。大の大人は税金を払うもので、もらうものではない」と、もともと考えていた。しかし、商店街や農業が補助金に首まで浸かっている現状を見て、さらにその思いが深くなった。だが当時、インフラや公務員のムダを批判する人はいても、この手の補助を公然と「ムダ」と指摘する人はほとんどいなかった。次第に「俺だけがおかしいのか」と鬱々とし、一人で抗ってもどうにもならないことを感じ、「こんな仕事やってられるか」と逃げてしまった。今でこそ、活性化補助金をムダという人は多いが、まだまだ少ない。だからこそ、役所に頼らず自力で地域再生に取り組み、失敗事例を集めるという著者は大した胆力と思う。

 だが「地方は稼げるようになる」という著者の考えには同意しがたい。首都圏自治体ですら補助金が当たり前と考えている。政府の地方振興政策が出るたびに施策にハマるような事業メニューを組む、コンサル・自治体・助成団体という地方の鉄のトライアングルが簡単に崩れるとは思わない。基礎自治体が次々破綻して数百くらいに離合集散するまで、彼らは「補助金で地域が栄える」と本気で思い続けているか、そのふりをしているだろう。

 その点、首都圏の鉄道会社は自腹を切って地域振興をやっているので、かなり当たる。京王電鉄の「高尾山冬そば」、京浜急行の「みさきまぐろきっぷ」、ひたちなか海浜鉄道の健闘などが挙げられる。どれも地域振興が目的ながら、顧客のお得感・利便を優先して考えている。ビジネス書の名著としてよく知られる小倉昌男「経営学」と読むと、「サービスが先、利益が後」という言葉が繰り返され、市場を向いてサービスを作っていったことがわかる。地方活性化はこうした創意工夫の機会を、ひき肉のようにすり潰していく罪深い制度である。一から考えるより、パッケージされた事業で補助金もらう方が楽だから。昨年から始まった「地方創生」も、費用から売値を決めるとか、こういう特産品・名物・名所を売りたいからこの商品・サービスを作るという話が多いようであり、徹頭徹尾、売る側の論理で考えているなら成功はしないだろう。

 何かの間違いで活性化界隈に戻ることがあったら、著者の話を聞いてみたいなあと思った……が、フィーは高そうだ。そして、なによりその界隈には戻りたくない。ヤダヤダ。
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