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10月の新書オーバービュー


 魚に関わる専門職を著者は「魚職」と表現する。消費者に近い方から「魚職」をたどった本。鮮魚店はいつも同じ魚が入るわけではない。近場で獲れたその日のものをどうやって料理にするか客に教えて売っていた。丸魚に慣れない人にはその場で下ろして売っていたが、そんな店も少なくなった……そんな書き出しから始まる。
 
 築地のような消費地の卸売市場の業者は、荷受と仲卸があり、荷受が生産地から大量に仕入れたものを、食材評価の専門家である仲卸の眼が判断して、小売りや飲食店に小分け販売する。市場も卸売会社も、イオンなど大規模小売が生産地から直接仕入れが増えているため取り扱い高や市場数は縮小しているとか。

 著者のノスタルジックな描きぶりに完全には同意しないが、鮮魚店の話を読みスーパーに行くと、確かに毎日微妙に売られている魚が違う。生の真鱈がなかったりメカジキがなかったりする。農産物や加工食品と異なるんだなあと実感する本だった。




 冷戦後四半世紀の首脳外交を生々しく振り返る概説書。通読すると、日本内外で大きく変化したこと、変わらないことがクリアに見えてくる。90年代、金大中の訪日談話を批判していた安倍首相の外交姿勢は、コペルニクス的に転換した。保守派に配慮しつつ村山談話を継承する談話を発表するとは、10年前多くの人が予想していなかっただろう。

 変わったのは、安倍首相の歴史認識だけではない。中国の対外政策は江沢民時代より明らかに強硬になり、冷戦時に比べて日中関係は明らかに悪化している。一方、湾岸戦争の拠出金や貿易交渉で「バッシング」とも言われた日米関係は、日本の凋落もあって非常に親密なものになっている。海外へ出すか自体でもめていた自衛隊は9.11以降のテロ対策と中国台頭により、集団的自衛権行使が可能になり、日本も米国との親密さを強調して極東につなぎ留めることに必死になっている状況だ。

 多少波風はあっても動いていない問題もある。核開発を含む北朝鮮の超強硬対外政策、北方領土問題、普天間移設問題などがそうだろう。20年以上動かなかった問題が果たして今後解決されるのだろうか、と読んで感じた。

 民主党政権と比較し、どうしても自民党を評価せざるを得ないのは、最後の最後で妥協できる点だ。その後の日本政府の歴史認識において指標となった村山談話は社会党のリーダーシップだったが、超保守派の江藤隆美も「閣内にいる限り批判しない」と付いて行った。それに引き換え、というとなんだが、尖閣・竹島、慰安婦問題は民主党政権、というか菅・野田政権で地雷の処理を間違え、円滑な意思疎通をできなかったことが今日まで後を引いている。普天間問題も岡田克也の「嘉手納統合」「100日で解決」など、閣内不一致の発言を繰り返したことが、対米交渉の余地を狭め、東アジア共同体の旗を振ったことが米国の不信を招いた」と著者は指摘している。鳩山政権崩壊の理由も理由であり、その責を相当負うべき人物である。なぜ近年まで代表を務めたのか、改めてかの党の見る目のなさを思う。

 
 当月最も面白かったのは「応仁の乱」。すでに8万部を超す大ヒットだという。天下の某紙に連載を始めてから著者に注目し、前著も読んでいたのですぐ読んだが、難しい本だと思う。注目すべき新書で水準も高い本だと思いつつ、jcastの記事(日本の歴史愛好家の知的好奇心、高かった 「応仁の乱」本が異例のヒット)の中公新書の人のコメント同様、なぜ売れているのか私もわからない。応仁の乱と題しつつ、主題は応仁の乱ではなく日記ベースの興福寺の歴史が主軸という斬新な切り口。だが、レファレンスを徹底的に整理し、新書としての完成度は非常に高い。決して、素人に毛が生えたようなおっさんが暴投した本ではない。
 
 本書で、あやしいお風呂遊びや日本初の違法ダンスクラブに言及するクラスタが多い。「あくまで小難しい歴史の箸休めとして書かれているだけで」と思う一方、日記解読ぶっ通しではなく、箸休めまで用意する著者の手練れぶりにも感心する。
  
 これだけの大ヒットにもかかわらず、Amazonにレビューが少ないのは、どう読み解いていけばいいのか分からない人が多いのだろう。著者に論文を引用されるくらいの日本史愛好家でないと、その真価はわからないのかもしれない。
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