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2016年の3冊&オーバービュー

 多くの人がいうように、今年は、というか今年も、というか中公新書が例年以上に当たり年で、読みたかったのに手にも取れなかった本がいくつかあった。毎月3冊読んでいたのではないか。といいつつ、中公のない今年の3冊。



 現代新書「情報参謀」小口日出彦
 野党時代、自民党がこれほど政治報道を詳細に分析していたのかと驚かされた。毎日、全報道番組を記録し「政府いびり・揚げ足取りは悪印象」「総裁のネット生中継が効果的」など進言も提示する。それまで事後的・受動的だった自民党のメディア対策が、世論がマスメディアからネットで作られる過渡期だった野党時代に刷新されたことがわかる。時事のニュースに即応して翌日には対応要領が作られ、自民党の動いていってほしい方向に、会見などを通じて世論を流していく。一方で、与党だった民主党はこの間、政府にいてこの流れに気づかず、環境相、経産相の発言がネット炎上し、数日で辞任に追い込まれた。舞台裏から自民党政治家の生々しいやり取りも書いていて大変興味深い。著者は書かないものの、ネットだけ見てると自民党の広報戦略に乗せられてしまうので、活字で補正しないとヤバいよな、ということでもあるのだが。




 ちくま新書「カストロとフランコ」細田晴子
 カストロが死去し、米国と国交を回復するというキューバの歴史的出来事が相次ぐ直前に出された。反共のフランコと共産主義のカストロがなぜ?という気もするが、スぺ語・カトリックつながりのほか、米国と必ずしもそりが合わないし旧植民地に影響が力を行使したいフランコの独自路線外交、バチカンを介した外交、キューバにとっても貴重な貿易相手、キューバもフランコもルーツがガリシアということで、冷戦中も細々と関係を維持していた。その結果、バチカンルートで米キューバの国交は回復された。日本人には普段見えない大西洋の外交を垣間見る貴重な一冊だと思う。




 光文社新書「テニスプロはつらいよ」井山夏生
 取材の深さを感じる本。世間的には無名(と言っては失礼だが)な世界ランク300位台の選手がテニスを始めてから今に至るまでのテニス人生を追いかけている。中高時代のコーチや両親にも取材していて、新書としてはかなり濃い内容だ。テニス大会は勝つごとに賞金が倍々で増えるとのことで、トップ10選手が何億円ももらう一方、四大大会にかすりもしない250位以下の選手は世界転戦で収支はトントンという。主人公・関口選手の浮き沈みは読んでいてつらいし、こう書くのもなんだが、いつも錦織だけ見えない男子テニス界について、下位からは意外に全貌が見える。



 主なレーベルについて。中公新書は今年の3冊には上げなかったものの、本当に面白い本が多かった。特に「応仁の乱」は話題になると思い、珍しく発売すぐにレビューを上げたが、本当に話題になり、実売もかなり多くてびっくり。そして、これだけの話題にも関わらずAmazonのレビューが2016年末時点で6本というのはかなり少ない。丁寧に書いているものの、読み解くのはかなり難しく、書評というか評価ができないのではと思う。ほかには、日本社会党の中道路線挫折を書いた「革新自治体」、ビルの生涯解説に合わせつつ米民主党の中道路線を書いた「ビル・クリントン」、戦後以降、連立組み替えで各政党が対立し政局がゴタゴタし続ける様子を書いた「イタリア現代史」、福祉重視で革新政党のように見えつつ実は保守層が多いという「公明党」のほか、「元老」「竹島」「シベリア出兵」を上げる。いずれもしっかりした資料に依拠しつつ、あまり知られていない知見・論点を提示する優れた政治・外交史の本だった。そういえば、イデオロギーとか路線対立の本が多いかも。やや辛くいうと、ラインナップが歴史に偏っているのかなあと思う。

 岩波新書も今年いい本が多かった。「自由民権運動」が筆頭か。政治運動というより、身分制社会が崩れた中で、「身分」という拠り所を失った人が新たな共同体として求めた「結社」であるという視点が発見だった。「弁士中止」のポンチ絵も本書を読むと「弁士は猪木だったのだな」と見方を改められる。毎日新聞記者の「ルポ難民追跡」「密着最高裁のおしごと」は、濃密な独自取材から書いていて読み込んでしまった。「情もくみ取るけど情より法理」という最高裁の論理を感じる。特に2章の夫婦別姓判決は、最高裁長官にそういう事情があったのか……と妙に納得した。最終的には司法でなく、主権者に委ねる違憲合憲判断もあるのかと。「自由民権運動」もそうであるように、岩波クサい論調の本が少ないのも意外だった。

 現代新書は「情報参謀」のほか、話題になった「捨てられる銀行」も取材が深い本だった。あまり評判がよろしくないが、当たり外れが大きいからではないかと。学者の新書だと、ブランド力で中公には追いつくのは難しいだろう。ジャーナリスティックな視点から時事的なテーマで新書を出し、中公とはまともにぶつかる機会を減らす、というのも戦略としてありではなかろうか。

 光文社新書では「電通とFIFA」がよかった。電通も遊びながら仕事にしてた人がいたんだなあ、と。サッカーなんて誰も興味ないよという時代からアベランジェと人脈をつくって数十年後にワールドカップを呼んでしまうという、電通力を感じた本だった。かの会社、遊ぶように仕事しないとダメなのかなあ。あるいは弟がリゾート王くらいの余裕がないとのし上がるのは難しいのかもしれない。


 本年ブログはこれで打ち止め。
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