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9月の新書オーバービュー



最近話題のオプジーボのほか、C型肝炎の特効薬、エイズ治療薬など「薬が効く仕組み」を解説した本。薬学の小難しい専門書ではなく、分子図を載せつつ、「細菌には抗菌薬があるのに、抗ウイルス薬がなかなかできないのはなぜ」といった生化学にそんなに詳しくない人向けに、薬学研究の動向・展望まで書いている。細菌は壁を壊せばいいが、ウイルスは遺伝子をするだけの機能しかなく、単純すぎて壊しにくい。おまけに大半のウイルスは人間の細胞内で増殖作業中なので薬で叩けない。「勝手に他人の家に上がり込んで家族のような顔をして資産を勝手に使って子どもを育て、家を壊して出ていくようなもの(p99)」。尼崎事件みたいな……

 抗がん剤分野で研究が盛んな分子標的薬のように、現代科学の粋を集めた研究が盛んな一方、手あたり次第拾った微生物の化合物を精製する方法は現代、ほとんど行われないという。現代技術で作れるものはあらかた作ってしまったというが、天然化合物は探すのが手間な代わりに、人間が考えもしないような構造・効能を持つものもあるという。ペニシリンや大村智氏のイベルメクチンが生み出されていて、いつか効率よく培養する技術が見つかれば再び道は開けるかも、という。




 オバマ広島訪問が、オバマのアイデアだけで行われたことではなく、水面下で現地からの強い招請があったことを示す本。DC駐在経験も長く、日米の政界に人脈を持つ著者が、「被爆体験の風化を防ぐのはオバマの広島訪問が最も有効」と、オバマ訪問へのシナリオを書いて広島県知事に提案した。広島の政財界から被爆者・一般人が訪問を招請する「オバマへの手紙」運動を自社で主催し、寄せられた手紙をホワイトハウスに手交し、非公式にホワイトハウス高官に招請もした。被爆米兵を研究していた森重昭氏とオバマとの抱擁は、実は著者が周到に用意した「仕掛け」だったことが本書で明かされる。

 著者も広島の世論も、核軍縮を進めるためにはオバマの広島訪問が大きな意義を持つと考え、著者や広島知事・市長は、オバマのサミット訪問を念頭に広島訪問のロビイングを始める。核廃絶に強い意欲を持つオバマ本人も訪問を望んでいたが、原爆投下を肯定する世論が多数の米国では、退役米兵や保守派を中心に反対が根強く、簡単ではなかった。この世論をどう説得するか。著者は二つのロジックを立てた。「広島訪問は『核なき世界』へのメッセージであり、謝罪は求めないのが広島のコンセンサスである」「広島の追悼は被爆死した米兵も含まれており、広島慰霊は米兵慰霊でもある」。ここで森氏の調査した12人の米兵が生かされる。本書で全文公開した、著者によるオバマへの長文の招待文では、森氏の活動を詳しく紹介している。日米政府ともオバマ訪問で森氏を前面に出すことで「和解」をアピールし、予想されたような保守派・退役軍人からの批判はほぼなかった。「米国内で総じて好意的な評価につながった」と著者は自己評価している。後知恵だが、トランプの米兵遺族中傷が凄まじい批判を呼んだことを考えると、「米兵追悼を含む」というロジックに米国世論は抵抗しがたかったのだろう。

 日本にとって幸運だったのは、オバマと近く原爆にも強い関心を持っていたケネディ大使、直前に広島を訪問したケリー国務長官の両氏がオバマ本人に進言したことが大きい。最側近のスーザン・ライス安保補佐官は広島訪問で再三、広島での大統領の行動を減らすよう要求し、ケリー長官とケネディ大使が協調して阻んだことも併せて紹介されている。なぜオバマが2つの被爆地のうち、長崎ではなく、広島を訪問したかがわかる。著者や知事が4年越しで入念に用意してきた努力の成果だった。オバマ本人や両政府の意欲あっての実現とはいえ、人脈があり、ロジックのある文章を書ける著者だから広島の世論をまとめ、日米政府につないで実現できた点も大きい。秘話の多い、面白い本だった。




 半年で分裂していたバスケリーグを統一させ、「五輪参加資格なし」の危機を寸止めした剛腕で、改めて注目された川淵御大の「ビジョンがあれば組織も人も変えられる」という力強い主張。「川淵バスケ協会長」案は、J生みの親でもある球技界長老の威光に頼ってバスケ協会の分裂を抑え込む策かと思われたが、意外にも川淵本人が、サッカー協会の運営幹部・顧問を投入して、bjリーグの10億円負債の処理のほか、補助金などずさんな財務管理にメスを入れるどうするかなど、組織改革にも関わっていたことがわかる。地域スポーツ重視の人だが、バスケでは企業名の存続を許した。とにかく「リーグ統一」を最優先した川淵視点での回顧になっている。

 大成功のように見えるBリーグだが、著者は潜在性を考えれば、野球・サッカーに次ぐ注目をされてもいいと考えているようだ。バスケ協会の重要会合より武藤嘉紀の身長の方が大きくテレビ新聞で扱われる。著者はバスケ改革でわざと、メディアに大きく扱われる言葉を語ってきた。だが、存在感のある論敵との場外乱闘がないと話題にならないし、社会に活動の意義・ビジョンを納得させる理論武装ができない。その意味で「渡邉さんのような人がいたらもっと世間の注目を引くのだが(p119)」という言葉は印象的だった。ヒールは必要なのだと。


 今月一番面白かったのは「給食費未納」。給食費がここまで奥深く、中学校給食に全国格差があることを知らなかった。学校、福祉を結ぶ機能として重要であることがわかる。
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