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水力発電が日本を救う



 元国交キャリア技官が書いた最近話題の本。内容は深くないものの、提言自体が面白いのでメモ。経歴を見ると、宮ケ瀬ダムとか長良川河口堰といった国交省でも最大級のプロジェクトを渡り歩き、河川局長まで務めたダム屋中のダム屋さんだが、本書では、「ダムは故郷を消し、環境にも負荷をかける。国内でこれ以上の大型ダム新設は不可能」とした上で、「今あるダムを最大限活用すれば水力発電量は今の3倍にできる。今の電気料金換算で2兆円の価値を創出できる」としている。

 提言の一つ目は、「常時ダムを満水近くまでためること」。今のダムは治水を重視し、半分程度しか水を入れない。だが、洪水の危険予測は現在かなり精度が上がっていて、1週間前には進路に入る可能性がわかる。ダムの水は利根川でも2日あれば河口まで行ってしまう。台風が来る前、晴天時に予備放流すれば治水に備えた空き容量は確保できる。この案は運用変更すればすぐにでも可能だ。

 二つ目は、ダムの壁を上げて容量を増やすこと。高さを1割嵩上げするだけで発電量が60%増えると著者は試算している。ダムの地形は逆円錐形なので、表面に近いほど水量は多い。夕張シューパロダムでは、1.5倍嵩上げしたことで貯水容量が5倍になった。ダム建設に数千億円かかる理由は、用地買収や代替インフラの設置費用が大半で、堤体自体の建設費は全体の3分の1という。単純に言えば、新設の3分の1以下の費用で新設と同じ効果が得られる。著者らの試算によると1と2の提言を実現すれば、発電量が300億kw時増える。

 三つ目は、「全国に数千か所ある砂防ダムに発電機を設置する」という案。一基につき、200~400キロワット程度といい、これらの中小水力発電で1000億キロワット時程度生むことができるという。新規の発電量が2200億キロワット。著者の提言の核心は、「小水力発電を、過疎山間地再生の切り札にする」というものだ。電力の固定買い取り制度を使い、地方自治体が出資して水力発電の特定目的会社を作って、砂防ダムに発電機を置けば年に数百万円の利益が見込めるというもの。地元の個人だと担保がないので難しく、大資本の民間企業だと地元との合意形成が難しい。自治体が国の信用保証を得て発電事業を行えば、地元の資源を地元に還元させるという大義名分も立つ、という筋書だ。

 火発も原発も、施設に寿命があり燃料費もかかる。だが、水力発電のエネルギー源であるダムは、メンテナンスすれば事実上半永久的に使える。ダム底への土砂堆積も排砂ができるようになった今では問題にならないという。

 著者は震災や原発事故以前から水力発電への投資を訴えていて、原発を否定する気持ちもないという。むしろ石油枯渇、環境破壊への危機感から書いているようだ。しかし、原発事故以降、これほど説得力のあるクリーンエネルギーの提言を読んだのは初めてだった。原発事故以降、1%にも満たない太陽光や風力が「原発はクリーンエネルギーで代替可能」と夢みたいな話がもてはやされた。高額な太陽光発電買い取りにより、全国に太陽光発電バブルを招来した事態を見ると、「なぜ震災直後に本書がでなかったか」と思う。

 本書に疑問点は少なからずある。砂防ダムがある山奥から電線を引くコスト、砂防ダムであれば頻繁に埋まってしまうのではないか……など。しかし、実証性が高い夢の提言だと感じた。
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