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地球温暖化交渉の真実




 経産省でCOP交渉に11回参加した、資源・環境問題の専門家。議定書作業部会の首席交渉官を務め、ポスト京都議定書への不参加を決めた。「地球のため」といいつつ、各国の利益やNPOのスタンドプレーに実に不毛な交渉の舞台裏を語る。気候変動交渉は、日本として得することは何もなく、防戦一方だ。そもそもCOP交渉は誰も得をしない交渉であるのに加えて、日本は世界でも最悪クラスのハンデを強いられて参加している。COP交渉で何か決まると、厳しい結論になるケースが多い。その理由を語っている。


気候変動交渉は経済交渉

 工場生産、農水産業はもちろん、商売でも電気や燃料を使う。温室効果ガスを減らすということはすべての経済活動を制約することだ。グリーン成長はあるにしても、国家全体ではコストアップになる。著者は「『グリーン成長』を主張した韓国はいまだに(気候変動枠組み条約で目標を課される)附属書Ⅰ国に移行しないし、欧州も経済危機になると、グリーン政策のコストを見直した」ことを「グリーン成長」否定の論拠として挙げる。


途上国と先進国を隔てる「共通だが差異のある責任」

 リオの気候変動枠組み条約に示されたこの言葉により、途上国は温室効果ガス削減義務から免れた。そのため、中国を含む途上国は、COP交渉で何ら義務を負うことはなく、先進国を突き上げるだけでいい。逆に日本は、途上国に目標を突き付けられる。しかし、途上国の二酸化炭素排出量は、1990年以降先進国の排出量をはるかに上回る。途上国が参加しないと地球にとって意味のある規制にならない。中国をはじめとする途上国が先進国の削減に「ただ乗り」してきた。また、先進国と途上国に限らず、「自分がやらなくても誰かが減らせば、地球の温室効果ガス排出は減る」構造が成り立つため、交渉の場でうまくやれば負担をこうむらない状況が続くため、交渉の場で激しい非難の応酬になる。


うまく立ち回るEU

 日本が05年比較での削減目標を提示するのに比べ、EUは90年基準で削減目標を提示する。日本とすれば、過去最大に近い05年から減らす方がたやすい。EUは東欧が野放図にやっていた90年から減らす方がたやすい。EUは「自分たちがこれだけ減らすのだから日米やロシアその他も減らせ」といい、環境NPOから大喝采を浴びる。EUはいいかっこができるが、日本はできない。


お粗末すぎた「鳩山イニシアチブ」

 09年8月に民主党が政権を取り、首相になった鳩山由紀夫が掲げた「温室効果ガスの90年比25%削減」について「百害あって一利なし」「非現実的」「自意識過剰」と酷評している。6月に05年比15%削減(90年8%)で交渉していた当事者からすれば、政策の180度転換であり、青天の霹靂だった。先進国へ引き上げを迫るばかりの中国の代表すら「どうやって達成するのか」とコメントしたという。鳩山イニシアチブは「日本が野心的な目標を出せば他国も追随する」と目論んでのものだったが、著者からみれば、「そんなお人よしな国はない」。各国とも国益を踏まえた数値を出しているのだ。原発に親和的な経産の官僚の著者をもってしても、鳩山イニシアチブの前提となる「原発14基新設、原子力発電シェア50%」などありえないと考えていた。「交渉プロセスも知らないでバカな数値を出してきやがって」という怒りが行間からにじむ。幸か不幸か原発事故を理由に鳩山イニシアチブを放棄できたのだが、「後退」と批判され、各国の信頼を落とすことになった。

 大事な交渉道具である数値目標をタダでばらまき、回収した鳩山イニシアチブはやはり万死に値すると私は思う。


 「米中が義務を負わないのでは意味がない」と判断し、ポスト京都議定書(第二約束期間)不参加を決めたカンクンの会議プロセスを描いた8、9章が本書の山場といえる。だが、なぜ気候変動交渉がうまくいかないかを総括的に論じた10章欧州のエコ政策が順調とは言えず、「東欧の発言権が増す今後は温室効果ガス削減に消極的になるだろう」とする11章は、気候変動に関心のある人にとっては必読だろう。
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