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10月の新書オーバービュー

 10月は比較的少なめの14冊。ゴリゴリの「大人の教養」論で大ブレイクのライフネット生命CEO。その新作「人生を面白くする 本物の教養 (幻冬舎新書)」は、驚くような合理主義ぶりだ。自分のスケジュールは社員誰でも入れていい、ゴルフもテレビももしない。にもかかわらず、超絶化石メディア・新聞は読むという。今どき珍しいのか、世代からなのか。ネット媒体で成功した人物の本は、この手の骨董メディアには見向きもしない。IT経営者なのに、「紙の本や新聞」という珍しい立ち位置だから注目されるのか。あるいはこれだけ読む人が減ると、逆に独自のポジションになるのか。なお、「本は速読しない」というものの全紙面中、2割の記事を20分で読むというのは相当なスピードだ。


 長期的な中国軍の脅威を示した「世界の軍事情勢と日本の危機 (日経プレミアシリーズ)」は冒頭の「中国による日本占領」という最悪の想定を示す。10年以内にはありえないが、その先は誰もわからない。「冷戦期の戦争とは異なり、複合戦が主流」といい、生物兵器戦、サイバー戦争を論じている。

 著者が本書で再三力説するように、日本は大戦末期や直後、国民の命を全く守れていなかった。「中国がミサイル飽和攻撃をしたら」「国家が消滅したとき政府がなくしてどうやって国を奪回するのか」。そうした「最悪の想定」がないことを本書は明らかにする。「国内全学校にシェルターを配備せよ」というのは極論ではあるし、組織いじりで国家の強靭さが増すとも思わないが、対案として提言をしているのはいい。

 日経プレミアからもう1冊、6月の中国株価暴落について書いた、「中国バブル崩壊 (日経プレミアシリーズ)」もあったが、こちらは日経2面の連載まとめみたいな本。とりあえず概要と表面を一枚めくった現状を把握する感じの本。

 チャイナバブルにもう少し突っ込んだのが、おなじみのチャイナウォッチャー近藤大介「中国経済「1100兆円破綻」の衝撃 (講談社+α新書)」。AIIB設立やIMFの地位向上をめぐる舞台裏の激しい駆け引きを描いている。巻末では天津大爆発を政争に使う習近平のお話なんていうのも。日本だと10年に1度しかないようなネタが中国にはゴロゴロ転がっていて、取材力があるチャイナウォッチャーは飯に困らんなあ……などと思ったり。


 佐藤優は今月新書を2冊出している。「同志社大学神学部」は、単行本の新書化なので、新作ではない。だけど売れ筋の「大世界史 現代を生きぬく最強の教科書 (文春新書)」よりは、こちらの方がいい。両書を読み比べて、佐藤優の本業は国際情勢評論より、神学をベースにした作家業であるべきなのではと思った。佐藤×池上対談は大体佐藤の方が多くしゃべっている。しかし、大半は専門外の中東、中国、米独の話題。ロシア時代の遺産やイスラエル情報機関からもらった情報で見立てを話していて、いかにもつらい。「ウイグルに第二イスラム国ができる」とか本当かいなと。

 「大世界史」に比べると、「同志社大学神学部」は、議論の中身は正直よくわからんのだが、本人も「虚学」といってるし、まあいいやと。人と深く交わり、神学の勉強に没頭していた様子、学生運動の余熱が残る京都の学生文化のようなものを感じられていい。

 佐藤健太郎の新作「世界史を変えた薬 (講談社現代新書)」は本がちょっと薄い。いい本を連発していて、私の中で期待値が高くなりすぎているのもあると思うが。

 「沖縄現代史 - 米国統治、本土復帰から「オール沖縄」まで (中公新書)」は沖縄の政局や政治運動を書いている。米国占領期に、日本本土とは異なる政治の発達を見せた。革新色が強い沖縄社会大衆党は、もともと保守も含めた全県的な政党で、民社党に近い思想だった。また保守と革新が交互に多数派を占めている。
 本土では、関東を中心に米軍基地の返還が進み70年代には反対運動が終息したのに対し、沖縄に本土返還のしわ寄せがあった。本土と沖縄で基地問題の存在感が違うことを、本書は指摘する。翁長知事ら沖縄の保守政治家について「独立論者ではない。日米安保も、ある程度の米軍基地も容認している。過重負担の軽減を求めているだけだ」というが……
 本書ではその沖縄独立論についても、手厚く論じている。支持者は一けた台でごくごく少ない。だが「琉球民族」意識を持つ人も、一国二制度的な自治権の要望を求める人も多い。尖閣を狙う中国への警戒感も強い。中身が詰まった本で「沖縄ナショナリズム」の骨格をよく描いている。

 中公でもう1冊「ヒトラーに抵抗した人々 - 反ナチ市民の勇気とは何か (中公新書)」は、死を顧みずヒトラーに反逆し、ユダヤ人を匿ったドイツ人グループの歴史。国内で1万人以上のユダヤ人が10年以上逃げ続けたこと、そして自分が逮捕されるリスクを承知で匿い続けた、無名のドイツ人が多く存在した。有名な「白バラ」や「7月20日事件」のほかに、「クライザウサークル」「エミール父さん」など、多くの反ナチス組織があったことを紹介している。ナチに批判的だった教会は抵抗運動を支え、キリスト教の「殺さない」も良心に基づく判断の一助になったようだ。
 ナチスが崩壊したからといって、反ナチ市民がすぐに顕彰されたわけではなかった。「反逆者が背中から弾を撃った」という中傷は戦後も続いた。連合国も、異常な人道犯罪集団だったナチスを滅ぼした全功績を自分たちに求めるために、ドイツ国内の反ナチ運動を無視した。ヒトラーを熱狂的に支持し、人道犯罪に見て見ぬふりをして間接的に加担したドイツの一般市民も、「裏切り」と切り捨てようとしていた。西独が国家として罪に向き合う過程で、彼らの運動を再評価した。この西独の意識的な転換は興味深い。


 今月一番面白かったのは「沖縄現代史」。本土保守と沖縄保守が、かなり違うことがわかった。「沖縄保守にとって、本土保守との距離は沖縄革新より遠いのかもしれない」と感じた。
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