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9月の新書オーバービュー(中国以外)

 「9月の新書オーバービュー(中国関連)」の続き。戦後70年関係の本も3冊。「日本を愛した植民地 南洋パラオの真実 (新潮新書)」は、米国で日本の植民地支配を研究した学位論文をベースにした本とのこと。植民地時代のパラオ人が日本統治について、好感をもって回顧している。
 日本の植民地だったパラオは、漁業基地として経済が発展した。木工を中心に無料の技術者養成校や、青年団などのリーダー養成活動もしていた。日本人との差別というより、官吏と民間・パラオ人の格差の方が大きかった。「下のランクの日本人は我々と変わらない」とパラオ人はいう。米国統治で補助金漬けになり、働かなくなってしまった。それで、植民地時代を経験した人たちは、日本にいい思い出を持つ人が少なくないのだ、と。

 「戦後の貧民 (文春新書)」は、著者自身も戦争で父親を亡くしており、実感のこもった記録。戦争未亡人は結婚数か月で夫が出征し、乳飲み子を抱えて戦後を生きる。原爆遺児や米兵との間にできた子供も苦しい。「貧民」にとって、目標に向かって共助していた戦中より、助けもなしに厳しい境遇のまま放り出された戦後の方がつらかったのかもしれない。

 過酷な戦争を語る上記2作とは、毛色が異なるが、大日本帝国を含めた大衆煽動の巧みさを説いた「たのしいプロパガンダ (イースト新書Q)」は、うんちくが多くて読みでがある。官製プロパガンダは、国民が自主的に手を取るような作品でなければ意味がない。大日本帝国ですら戦時中にハワイの戦果をアニメにし、軍歌も流行歌にしてしまった。ポチョムキンを作製したソ連はいうまでもない。
 今の日本でも軍事プロパガンダが……という話を、最終章でしているのだが、ありきたりな「軍靴の足音」ロジックではなく、「百田尚樹『永遠の0」=右傾エンタメ説」を起点に、「感動を通じて自身の思想へ誘導する」ことは、優れたプロパガンダの特長でもあり、警戒すべきものだと結論付ける。同様に自衛隊の「萌え」広報や「歌姫」を前面に出すソフト広報も、かなり奏功している。本書は政府のプロパガンダが今後、より巧みになる蓋然性は高いと予測している。


 そのほか「「個人主義」大国イラン: 群れない社会の社交的なひとびと (平凡社新書)」がなかなか面白い。著者は四半世紀、イランの繊維業界をウォッチしているアジ研の研究者。イラン商人のしたたかさや商慣行の難しさに舌を巻く。イランの信用は、職場や肩書ではなく、友人であるか否かだという。10年以上前に中国製品が席巻するようになり、自国生産は減ったようだが、市場は活気があるようだ。

 平凡社新書でもう一冊。ヨコタ村上孝之の「世界のしゃがみ方: 和式/洋式トイレの謎を探る (平凡社新書)」は便器写真が大量にあり、食事中の読書にはお勧めできないが、和式が日本だけではなく、アジアで一般的なしゃがみ方であること、大便器の個室ではない地域も多いことなどを指摘している。インドから中東にかけて、ハンド・ビデというシャワーみたいな尻洗浄器があって、本書でも紹介されている。私はインドでシャワーと勘違いして頭からかぶった後、それに気づき血の気が引いた。amazonで天敵・小谷野敦が即座に酷評レビュー(だけど星2つ)してて、やはり……

 9月で一番面白かったのは、「イスラーム圏で働く――暮らしとビジネスのヒント (岩波新書)」。湾岸諸国人の品性のなさに改めて呆れ、「パキスタンの女性差別はイスラムではなく南アジアの文化」という指摘が腹落ちした。よくいえば家族的。悪くいうとわがままとしか思えないのだが、一緒に働くのはきつそう。日本を代表して中東で働いている人たちへの敬意がわくばかりである。
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