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(読書メモ)大村智 - 2億人を病魔から守った化学者




 周知の通り、2015年のノーベル医学生理学賞を受賞した、北里大学の大村智さんの伝記。偉人伝的な賞賛ぶりではあるが、タイトルの通り、発見した薬は毎年3億人が服用していて、過去2億人を救った。世界中に猛威を振るっていた死病をあと数年で撲滅させようとしているのだから、当然の賞賛だろう。

 受賞内容や薬発見などのハイライトは報道で紹介されている。ただ、大村氏がすごいのは、ノーベル賞の研究は人生のほんの一時期かかわったただけの話だということだ。発見から数年後に新薬発売となり、氏の米国の恩師であり、交渉相手のメルク研究所元所長に「智を幸せにしてやれ」という肩入れで販売額に応じたロイヤリティーが入ることになった。過去の総額200億円を超す特許報酬で、所属していた北里研究所の債務超過をチャラにした。さらには病院も建て、別法人だった北里大との合併まで主導した。研究・北里研運営と並行して、女子美大の理事長もし、国内画家の作品も収集している。自分の力で200億円取ってきたのも素晴らしいが、本当にすごいのはあぶく銭にせず、生きた金として使っている点だろう。

 大村氏にノーベル賞をもたらした2億人を救ったメクチザン無償配布の経緯はちょっと複雑。もともと家畜のフィラリアをほぼ排除する薬として販売された。牛でも犬でもとにかく飲めば寄生虫がほぼ予防できる。人にも効くかということで、メルクが開発し、無償配布することにした。当初、大村氏には話がなかったため、「志はいいが、発見者の権利を無視するのは許されない」と憤慨する。メルク社長が東京にすっ飛んで謝罪し、「人類のためなら」ということで無償供与に同意したという。これも、有料販売していれば、数百億円入っただろうが……

 もう一つ、女子美大100周年記念号の表紙に一風変わった直筆を披露する。筆先を半分切って書いた字だという。「ほかの人には書けないオリジナルの字を書きなさい。工夫してオリジナルを求め創造するのは科学も芸術も同じ」。

 受賞時、本書が多く紹介された。本書しか氏の概要がわかる本がないからだろうが、今後も本書を超す本はないだろう。メクチザンにとどまらない、経営者・趣味人も含めた大村氏の全体像を丁寧に描いている。読めば読むほど、これほどけた外れの巨人がなぜ自分も含め知らなかったのかと思う。iPS細胞の山中氏の業績も画期的であって素晴らしいし、将来人類の寿命を驚異的に伸ばすだろう。だが、まだ開発中で1人もに浴していない。それに比べ、2億人を救った男だ。
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