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はじめての福島学



 「普通の人」の視点で、福島と放射能の問題を考えようという本。原発事故後の福島にステレオタイプ化した主張がまだまだ溢れかえっている。「福島は放射能で人が住めない」など、マニアックなデータや思い込みで話している人が多い。そういう人にはありがちだが、コミュニケーションがなり立たない「アレな人」が多い。声は大きいから、福島県外にいる人の中には真に受ける人もいる。

 放射能被曝に関連するデータは3.11の原発事故直後、メディアやネットに溢れかえっていたが、今は見る機会も少なくなった。しかし、膨大なデータ群は当然、今も計測され記録は積み上がり経年分析ができている。市場で流通する福島産食品の放射能による身体への直接被害はありえない。「米は欧米より10倍以上厳しい基準値で1000万袋全て検査し、昨年は基準値超えゼロだった」という事実はもっと知られてしかるべきだろう。

 人口流出も危惧されたが、近年話題の地方消滅レベルの流出はあるものの、ほかの東北各県よりは流出人口が少なく、有効求人倍率も出生率も高い。初婚年齢も全国で一番若いのだという。

 放射能と健康に関するデータをこれからも細かく計測して、安心のための科学的根拠を提示することが重要だ。データを知った上で、放射能を厳格に忌避する考えも、健康に問題がないレベルならいいとする考えも、どちらも互いに尊重すべきだと著者は書く。ただし、知りもしないで「福島危ない」「どうなるかわからない」と叫ぶだけの困った人は迷惑なので放っておいた方がよい、と。

 3.11直後から「県外にいて『福島が危ない』なんてバカじゃねーの」と思って、半年後のドン・キホーテで激安の福島米を買い、1年後に南相馬を旅行してた私から見ると、当然の内容だと思う。むしろ、福島と放射能にいくばくかの不安を持っている人が読むべき本なのだろう。巻末の入門書には必要不可欠だと思っているブックガイドがあって、さらに読み進めたい人に有用。ありがちな「ありがた迷惑な人・主張」パターンリストも読んで面白い。「福島の人は怒れ」「住み続けざるをえない可哀想な人」……いろいろと面倒くさいのと関わって神経をすり減らす著者もしんどいだろうなあ。あるいは図太くてこたえないのか。

 避難で無人になったまち・社会の現状報告もあった。帰還可能になっても、病院もスーパーもない街には帰れない。全国から来た原発作業員が、街中でチューハイを空けている。こうしたコミュニティをどう作り直すのか。著者が今後も復興を追い続けるなら、その提言も読みたい。

 科学的な原状回復も必要だが、放射能問題への感情的な原状回復も必要だと思う。しかし、実に面倒くさい。原発事故からの社会復興に今も関わり続けている著者や多くの研究者には頭がさがる。近所の精米店には会津産しかないが、私も米くらいは意識して買うようにしようと本書を読んで思った。
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