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2月の新書オーバービュー(下)

2月の新書オーバービューの続き。

 ジッグラトからプルジュハリファまで、3000年を書ききった「高層建築物の世界史 (講談社現代新書)」は、この内容で破格の安値。扱う建物も古代ローマのアパート、スターリン様式、台北101などなど、日本に限っても出雲大社から天守閣、スカイツリーまで実に多種多彩だ。3分の2は19世紀末以降、というかニューヨークの摩天楼以降の話。読んでいると、「富のある所に塔は建つ」という印象を強く持つ。
 中世は教会のゴシック建築が空を突くように建てられ、ルネサンス期のイタリアではサンジニミャーノに数十もの塔がボコボコ建った。イスラム圏でも、建物は権威の象徴だった。イスタンブールのブルーモスクのミナレットは6本建っている。15世紀当時、6本あったのは聖地メッカだけ。「メッカと並ぶのは許されない」と指摘を受けたアフメト2世は、メッカに1本寄進し、自分のモスクには予定通り6本建てた。
 19世紀末に鉄骨が発明されたことで、建物の高さ限界が100メートル前後から一気にエッフェル塔の300メートルまで跳ね上がり、経済が急成長していたニューヨークは超高層都市になった。
大戦後は冷戦下、共産主義の優越を誇るオブジェとして300メートルを超すテレビ塔が、東側諸国に建てられ、アジアでも20世紀末からの20年足らずで、中国が日本の5倍以上の高層ビルを建てまくった。
 余談だが、小ネタも豊富。「Skyscraper」の邦訳は明治期、「凌雲閣」だったといい、「摩天楼」になったのは大正時代に入ってからだった。永井荷風もシカゴの摩天楼を「凌雲閣」とつづっている。震災で焼け落ちた浅草の望楼「凌雲閣」は固有名詞ではなく、「浅草スカイスクレイパー」という意味だったわけだ。確かに「摩天楼」という名称もよく読むと古風ではある。

 「地方を食いつぶす「税金フリーライダー」の正体 タカリと粉飾の日本病 (講談社+α新書)」は、前著「京都・同和「裏」行政 現役市会議員が見た「虚構」と「真実」 (講談社+α新書)」で、京都市の同和行政の乱脈ぶりを暴露した市議。前著であれだけ叩かれた同和行政自体は改善された。しかし、そのほかの行政執行は相変わらずひどい、と指摘している。「ボヤは火事ではない」という京都市独自のインチキ火災統計、年に1件しかない雨水浸透枡補助金、税務なら内勤でももらえる特別勤務手当、留年生徒2人のために2億円投じる短大……法律上そうだけど、市民感覚だとおかしい。
 20年ほど前から自治体の土地開発公社破綻が各地で相次いだが、本書でそのスキームや赤字にならざるをえない構造を非常に分かりやすく説明していた。これはいい。自治体は予算がでないと土地が買えない。その間に地価が上がり予算内で買えないケースが、高度成長期にはあった。そのため、ひとまず公社に買わせ、簿価で自治体が買い取る。そうすれば、予算内に取得できるし、あわよくば宅地整備して転売し、差益もできる。
 ところがバブル崩壊で用途がなくなり、あるいは簿価を大幅に下回る価格で買えば公社は大赤字、さりとて時価で買えば自治体の責任を問われる。そのため公社に高値づかみした土地が塩漬け……ならいい方で、京都市ではわけありの土地を不適正な値段で公社に買わせ、何十年もほったらかしというケースもあった。
 京都市はようやく数年前解体が決まった。それでも、15年かけて公社から土地を買い戻すという。公社の金は金融機関融資なので、金利もかかる。著者はすぐ全資産買い取り清算すべきだとしている。

 今月1番良かったのは、「高層建築物の世界史」。本書の良さはとにかくその網羅性に尽きる。amazonレビューもそこを評価するコメントが多い。私も同感だが、最後のまとめもよかった。高層建築には権力や地域のアイデンティティ、土地の有効活用など7つの役割があるという分析から、「高層建築には土地の記憶に多大なインパクトをもたらすため、高い公共性が求められる。スカイツリーで沸いてはいるが、日本では今後闇雲に作る必要はない」という警鐘できちんと締めている。普通の高層建築本が高層建築をただただ「スゲえ」と言うだけなのに対し、本書が研究者らしく「なぜ経済性を無視してまで高層建築を建てるのか」という疑問から入っているからかもしれない。
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