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2月の新書オーバービュー(上)

 2月発行の新書は30冊くらい読んでいるため、当月もオーバービューは2本運用。

 医学者の岩田健太郎の「食べ物のことはからだに訊け!: 健康情報にだまされるな (ちくま新書)」と、薬学者の船山信次「毒があるのになぜ食べられるのか (PHP新書)」は、ともにそれぞれの観点で、食べ物と健康の関係をともに論じている。
 岩田は特定の食品を「食べる」「食べるな」という健康法は現状ではありえない、むしろ一つの食事法に固執する方がハイリスクだと指摘する。「糖質制限と健康は関係ない」「人工甘味料、マーガリンを食べても大した健康被害はない」。食品リスクマニアが読めば目をひん剥くような内容だ。Amazonで糖質制限信者から集中砲火を浴び、それらのレビューが高い評価を受けているのを見ると、信者は怖い。
 本書の一番の読み所は美味しんぼの例の鼻血問題だ。著者は「『放射能で鼻血』は医学的に不適切」と指摘する一方で、「美味しんぼは雁屋哲が自分の主観で食べ物の善悪を書いているエンタメ漫画であり、正しさを求めるのは筋違い。批判するのなら自分で検証することも必要」だと主張する。雁屋哲は、妊婦が酒を飲むことは容認するが、添加物・薬品が入るのは一切認めない。大企業のオートメ生産は認めないが、非常に危険の高い生肉や生魚の摂取には寛容だ。
 というように、美味しんぼは、独自の世界観が確立されていてメッセージ力が強い。しかし、長年の読者は「またいつもの……」と察してくれるはずなのだ。岩田もいうように、既成の食の価値観・権威を否定する美味しんぼが、皮肉なことに逆にありがたがられるようになった。有機栽培信仰や化学調味料需要下落は美味しんぼによるものだ。美味しんぼだから、鼻血問題も大事になってしまった。
 本書では、医学はほどほどに「食べ物は自分の体と相談しながら食べるのがいい」という結論を引いている。毎日同じものを食べるのではなく、その日・体調に合わせて。これはいい助言だと思うのが「たまに自分で調理すれば、自分に適正な塩分甘味分のさじ加減がわかる」と。トンデモ健康法は論外だが、現代医学も含め、人の意見が全て正しいわけではない。自分のセンサーを磨くことが大事、添加物にこだわりすぎるべきではない、と。

 船山の本は、個人的に発見の多い面白い本だった。野菜も魚や肉など、身近な食べ物の中に含まれる毒は多い。その半面で薬になる成分も多い。毒のあるものをどうやって食べられるように調理するかを紹介している。
 ほうれん草は苦いけど生でも食べられるのになぜ茹でるのか。痛風因子のシュウ酸がほうれん草には多量に含まれている、だから湯水に浸すことで、シュウ酸を抜く方がよい。パイナップルはよく熟していないと。果実中の酵素で口が消化され切れてしまう。それでたまに痛い思いをすることがあったのか、と。
 大東島の極秘の魚・インガンダルマは、食用が禁じられており、刺身はこっそり食べる。なぜ禁止されているかというと、肉に多量のワックス油が含まれていて、人間が消化しきれず皮膚から滲み出し下痢を起こす。昏睡状態になることもあるという。それでも食べるというから、怖い。フグもそうなんだが。それと、ウナギは刺身では食べるべきではない。血液中に毒があり、失明や知覚・呼吸麻痺を起こすという。加熱すれば消えるというので、蒲焼きというのは、ある種の知恵なのだなと思う。
 ほかにも植物では銀杏、じゃがいも、空豆。プリン体もある種の毒といえる。食物由来ではないが、食中毒もある。本書を読んでいると、中毒覚悟で色々調理を試し、経験を積んで食用の幅を拡げたチャレンジャーの創意と工夫を感じる。
 船山も岩田も言うが、農薬・添加物を忌避するのに毒性のある酒を好んで口にする。自然であれ人工であれ、物質が同じなら毒性は変わらない。船山はむしろ毒のある飲食物と、量をほどほどに、調理法を考えるなどしてうまく付きあう方が望ましいと主張している。

 東京メトロの駅舎・案内表示デザインを長年手がけてきた赤瀬達三「駅をデザインする (ちくま新書)」は、「日本の駅デザインが世界的に見てかなり遅れている」と指摘する。駅構造にしろ案内板にしろ、利用者にとってのわかりやすさが最優先課題だ。海外の大きな駅だと、どこにいても駅全体の見通しが利き、自分がどこにいるか、どこへ進むべきかすぐわかる。ところが日本の駅は、わかりやすさが全く無視され、土木の都合だったり、駅舎設計者の自己満足優先になっている。JRにしろ私鉄にしろ壁が多く、天井も低い。案内板も至るところにぶら下がっていて、迷路のようだ。
 TX、みなとみらい線は案内板のほか、駅舎も著者デザインとのことで、大空間ですっきりした構造になっている。またロンドン、パリ、ストックホルム、北京、香港などの地下鉄も優れた駅舎デザインとして取り上げられている。ここにはないが、マドリードのアトーチャ駅も、連絡デッキから各ホーム、その反対側に待合スペースが一望でき、どこへ行くべきか、見れば分かる。
 そして、本書の見どころはなんといっても、ダメな駅舎を紹介した6章だろう。とりわけ、改装した東急渋谷駅のひどさ、空前絶後。天井が低い、壁や柱が多く一望性がない。優れた駅は、駅構造そのものが利用者をガイドしてくれるものだ、と経験的に感じていた自分の感覚を明晰に説明している。

以下(下)へ続く。
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