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1月の新書オーバービュー(下)

 「1月の新書オーバービュー(上)」の続き。中国がらみで注目すべき3冊。どの本も中国人相手の交渉の面倒くささを饒舌に書いている。

 中国で外資というか日系資本は搾取の対象でしかないというのを痛感する「チャイナハラスメント: 中国にむしられる日本企業 (新潮新書)」。スズキで中国ビジネスを30年やった人の体験的中国ビジネス論。言い方は悪いが中国本土で取引するのは、泥棒に物を売るのに近い。合弁会社設立や技術供与の交渉を中国人相手にやるのは非常にしんどいという。
 交渉は些細なことからはじめ、成立寸前に大きな譲歩を強いる。技術は政府に吸い上げられることを約束させられる。タダ同然の地価の土地に出資分の値段を上乗せして「現物出資」と称する……著者は「現物出資は絶対避けろ」という。
 WTO違反じゃないかと思う話も多い。広州や上海では、ナンバーやサイズ規制で事実上、小型車が排除されていたとか。「中国人相手には原理原則は絶対譲るな、先方は相当吹っかけてくる」と繰り返している。著者がいたのは10年近く前の話なので、今はやや改善されていると思いたいが、露天の土産物売だと、結構吹っかけるからなあ。

 李登輝の 「新・台湾の主張 (PHP新書)」は、台湾民主化時の権力闘争を自身の口で語っている。長年参謀総長を務め、軍を牛耳っていた郝柏村を国防相・首相に昇格させることで軍服を脱がせ、円満に軍への影響力をそいだ。終身国会議員にも国民党マネーで巨額の退職金を支給する代わりに引退させ、民選に導いた。中国人の権力にかける執着、それを硬軟巧みに使い分けて取り込んでいく李登輝のネゴ、これぞ中国という感じ。「ポリティシャンでなければステーツマンになれない」とニクソンが言ったか言わないか知らないが、そうなのだろうと思う。
 本書は李登輝回顧録ではない。著者は今なお現役の政治家であり、書名の通り、本書は今後の台湾に対する自身の所信である。実際にどう働きかけていくかはわからないが、アンチ馬英九のスタンスは鮮明だ。日本への支持者へ向けて書いた政治戦略という文脈で読むべきだが、それも含めて楽しみたい。

 緻密な史料読解とインタビューで、日中韓の歴史政治の過程を明らかにした「外交ドキュメント 歴史認識 (岩波新書)」を読むと、歴史認識は、「作られたもの」であり、「政治的妥協の産物」であることを実感する。河野談話では韓国とのやりとりを綿密に行った。また、中曽根首相の靖国参拝断念は、親日派と目されていた胡耀邦総書記の失脚を防ぐ意味合いが大きかった。いずれも中韓と綿密に話し合った上で官僚がドラフトを練り上げ、政治家に根回しして発表する。交渉段階から、さらけ出される今どきの政治とは違ってやりやすかった点はあるだろう。
それと、歴史を実際に見た人たちが指導者層にいたから、良好な外交関係を維持できたと感じる。胡耀邦、中曽根もそうだし、村山富市もそうだったようにミリタリー経験者も多く、歴史を自分の目で知っている、また戦争への忌避感が強いことから、批判一辺倒にならないような努力をしていた。しかし、世代が代わり、日本の指導層も暴走して憚らない人間が増え、中韓もそれ以上にいる。

当月、一番面白かったのは「沖縄の不都合な真実 (新潮新書)」。真実度は7割位だという気もするが、これこそ「マスコミが報じない」真実だと思う。
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