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2014年の新書オーバービュー

 2014年の新書のレビュー本数は70本。前半は密度の高い新書が多かった。後半は本自体かなり読んだけど、読んでみるとさほど……という印象でした。



 間違いなく、今年一番面白かった新書はこの本。ドイツという国の立ち位置について、「西欧国家」という先入観を劇的にひっくり返す本だった。もともとストラスブールからカリーニングラードまで抱えていたドイツという国は、東西ヨーロッパがぶつかり合う、どっちつかずな国だった。フランス国境近くに住んでいたアデナウアーだから、ドイツの西欧化が実現できた。西欧になりフランスと「結婚」したからこそ、EUのリーダーにもなれた。今まで西独出身の政治家ばかりだったから、心情的に親仏だったが、東独出身のメルケルが長く首脳にあることで、ロシアとの距離感も微妙に近づいてるのかな、とも本書を読んで感じたり。



 経済で巨大なセクターになった社会保障について、「社会福祉法人」という仕組みがうまく行っていないことを指摘した本。補助金が一度認められると、ろくな監査もなくだらだら税金が垂れ流され、巨額の内部留保が積み上がる。理事長一家だけがおいしい。財務省が介護報酬の引き下げを図るというが、理事長一家の懐からまず削ったらどうでしょう。



 建国してたかだか200年、フランドルという経済力のある立地だけで生きている国の歴史。仏語VS蘭語が建国以来の大問題のため、議会が首相を選ぶともめる。そのため、国王が何人かいる顧問の意見を元に大命降下するという、戦前の日本のような首班指名になった。それでも近年は2年も内閣ができない、という不思議な国家システム。本書を読んで以降、ハーツ・オブ・アイアンでベルギーを選び、ナチスのフランス侵攻をナミュールで食い止めるのがマイブームになってしまった。



 全く新書界隈で話題にならなかったし、内容も読んで飲み込まれるような面白さはなかったが、素人にも分かりやすい生命倫理の本。人間は好き勝手に子どもを作っていいのか悪いのか。人それぞれではあるものの、共有すべき何らかの規範は必要であることを本書は説明している。



 5冊目は中公の中で結構悩んだ。しかし、アメリカの宇宙開発を背負う巨大組織の全貌を知らしめた本書がいいなと思った。研究センターだけで10もある。NASAだけで日本の理研みたいなデカさ。宇宙予算はカネを生まないので削られやすかったが、冷戦期は国威発揚で、冷戦後は城下町の州選出議員、下請け企業が応援団になり生き残った。しかし、下請・関係先が増える一方で、NASA本体の職員は製造・開発現場を知らず、コスト、マネジメント重視によるトラブルが散発しているようだ。

 レーベル別に見ると、中公は27冊で今年も最多。アデナウアー、「ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者 (中公新書)」のほか「ヒトラー演説」、関連では「物語ベルギーの歴史」「スターリン」と、やけにナチスドイツづいていた。来月はビスマルクが出るとか。直近では「マリー・アントワネット フランス革命と対決した王妃 (中公新書)」やスターリンもそうだが、誰もが知っている歴史上の有名人の評伝も多い。「再読すると実は…」という仮説論証系の中公らしいものが多い。新書発の学芸賞もここ数年多く、中公がぶっちぎり。来年も中公の年なんだろうか。

 今年は現代新書が当たり年だった。32冊読んだが、多くの本が、それまでの本にない独自性があり、ジャーナリスティックでもあり、娯楽としての読書にもなる作りだった。米中戦争をシミュレートした「米軍と人民解放軍 米国防総省の対中戦略 (講談社現代新書)」は、自衛隊が盾・被弾役をという冷徹な役割分担を示している。「国際メディア情報戦 (講談社現代新書)」も、メディア戦略を読み物として臨場感たっぷりに紹介している。大統領再選へ向けたオバマのテレビ戦略が実にあざとい。最初のテレビ討論会で劣勢となるや、ホテルで討論会ブートキャンプを開いて、シミュレーションをやってしまう。テレビ芸人並みの反射神経を持つ、と著者は言う。

 光文社新書は23冊。家族問題を問う本に良書が多かった。「生命倫理」のほか、「「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)」も。また、未踏の分野を紹介してくれる本もクオリティが高かった。今年後半、ユーチューバーがメディアで急に話題になり始めたが、youtubeのPR戦略もあるだろうが、「YouTubeで食べていく~「動画投稿」という生き方~ (光文社新書)」もあったんではないかと思う。非課金さんとか、全くしらなかったが、朝日の正月特集にも登場するそうで、ユーチューバーブームの半歩前に知ることができたのはよかった。今読んでももちろん遅くはないが。もう一つ「素潜り世界一 人体の限界に挑む (光文社新書)」は素潜りで見る深海の世界、感覚をポエティックな文章で綴る世界の第一人者の本。ディープダイバー一本で暮らす苦労も書いたりしているが、海に浮かんでるようなみずみずしい不思議な読後感だった。

 ちくま新書は12冊。小難しい本が多いが、地域のつながりを取り戻そうとする本がよかった。「自治体再建: 原発避難と「移動する村」 (ちくま新書)」は原発事故後のコミュニティ再建について、避難と帰還の二元論に囚われることに警鐘を鳴らしている。「つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)」は、誰もが訪れることができる公共施設、図書館が地域の拠点となっている話。課題解決型、市民活動支援など、事例が豊富で面白い。

 新潮新書と文春新書は19冊。ほぼ娯楽の読み物で手堅い。

 ということで今年はお開き。また来年。
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