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10月の新書オーバービュー

 今月はパッとしないが、ブルーバックスの2冊が目を引いた。「驚異の小器官 耳の科学 (ブルーバックス)」のほか、「川はどうしてできるのか (ブルーバックス)」がすごく面白い。川は数億年前、大陸移動の前から流れていて、川がヒマラヤをぶち抜いたり、揚子江とメコン川がインド大陸に押し上げられてすぐ隣同士を流れたりしているとのこと。著者の仮説ながら、ニジェール川とアマゾン川はかつて1本の大河だったのではないか、などびっくりな話。河口から先も川の流れは続いていて、荒川も多摩川も一本の海底川となり、やがては海溝に注ぎ込むのだという。どちらとも理系じゃなくても読みやすい。

  「東京都市計画の遺産: 防災・復興・オリンピック (ちくま新書)」は、都職員及び関係者のみが読む都政新報に掲載されていただけあって、東京マニア以外にはついて行けないわかめな本。中野通り、中杉通り周辺に在住経験があるので、その成り立ちについて書かれた第3章は興味深かったが、外苑の話が延々……正直飽きてしまう。町並み保全、緑化を基本としながら防災を重視する越澤の都市計画思想は正しいと思うが、ちょっと独善的な印象も本書から感じた。余談ながら裏表紙の著者略歴が著作と公職歴でびっちり埋め尽くされており、どうなっとんねんと。

 「英会話不要論 (文春新書)」は東大教養英語の重鎮によるエッセイ。「会話重視」か「文法重視」か。レビューを書いている人も多くて、日本人はこのネタが好きだなあと。どっちにしろ、「本人の基礎知能」×「学習時間」だと、私は思うけどなあ。
 後半は翻訳の話が主。むしろこちらのほうが楽しい。キーンさんやサイデンステッカーの「誤訳」を取り上げている。一文の中での主語の入れ替わりを見落とした誤訳が多い。「伊豆の踊子」で踊子と私が別れる場面「私が縄梯子に捉まろうとして振り返った時、さよならを言おうとしたが、それも止して、もう一ぺんうなずいて見せた」。の「さよなら~」以降の主語は踊子だという。直前に「踊子が一言も言わなかった」云々の記述があるので、「当然踊子が主語」というが、私には判断しがたく、「私が主語」と認識してすっと読んでしまった。自分の小説読解センスがないんだなと改めて実感した。ちなみに「雪国」の冒頭「夜の底が白くなった」は、サイデン氏と同様、自然描写だと思っていたが、「島村の内面・心理描写」と、日本人は捉えているとのことだった。自分の言語感覚の歪みを気付かされた意味で、後半の方が読みがいがあった。

 「大人のひきこもり 本当は「外に出る理由」を探している人たち (講談社現代新書)」は、先月の「最貧困女子」もそうだったが、社会から振り落とされていく人たちのルポ。最近の新書では多い。本書は40歳以上で10年以上のひきこもり者の事例を集めている。コミュニケーション力が低い、体が弱いなど個人の特性に依るものや、就活が不首尾、リストラなどで弾き出された人たちが戻るきっかけをつかめない。役所もそうした人を把握できない。時間だけがズルズル経ち、いつの間にか……という人が多い。
 本書も触れ、私も思うが、日本では、ひところ前の「生活保護バッシング」のように、「大の大人が働いていない」ことに強い嫌悪感を示す人が多い。東南アジアやインドだと、昼間からぶらぶらしてる大人が多かった。「食わせる人が何十人分も養う」文化か。働けないでも働けないなりにそこそこ楽しく生きられる社会であってほしい。首尾よくスタートラインに乗り全力で走ってればそこそこ幸せだが、走れなくなると振り落とされていく。バリバリ働く人もいれば、働けない人もいて自然で、少しだけ働ける、あるいは社会に貢献できる場所を作る。そうした人も落伍させない国がいい国ではないか。個性が色々あっての人間社会だと思う。理想論に過ぎるが。
 緘黙症でひきこもってしまったの20代なかばの女性の話(p160)が、読んでいて胸が苦しかった。中学で療育機関に見捨てられ、完全緘黙になった娘の前でお母さんが泣く。以来10年、娘の声が聞けないのだという。

 今月一番面白かったのは「ふしぎな国道 (講談社現代新書)」。マニア視点からの読み物にほぼ徹していて、国道標識が3枚縦並び、国道最高地点、最低地点、四国の439や男鹿半島の迷路国道、阪奈道路の崖国道……国道・酷道名所をほぼ網羅していて、大変充実していた。
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