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9月の新書オーバービュー

 むちゃくちゃ読んでしまった。毎年9~11月はいい本が出るが、当月9月も読みたくなる新書がどどっとあり、31冊読んだ。印象的な本も多かった。

 親会社の戦争にお付き合いしつつも、中公新書ラクレのいい意味で斜に構えたというか、ありがちテーマながら常道の攻め方から外れた2冊の本が良かった。「ベスト珍書 (中公新書ラクレ)」は、「あんまり読みたくない本の案内」。書籍紹介本って普通は「読んでほしい本」「おすすめの本」を紹介するものだが、ゲロの写真集、硫酸ピッチ不法投棄の写真集などなど誰が読むかという本が並ぶ。
 中には面白そうな本もあるが、しかし、読んでいると、「こんなもの集めてどうする」「考えてどうする」といいたくなる人間の収集対象の広さ、執念、そして奇想力にビビる。コラムもいいんだが、著者が考える「最も効率的な図書館ライフ」で紹介されてる図書館、自転車で行ける俺は幸せ……って思ったが、そもそも2週間で45冊も読まないか。
 ちなみに著者からメンションを頂いてプロフィールを読んだら、あの変わった装丁の変な本の編集者かと。蔵書に何冊かあった。「消滅した国々―第二次世界大戦以降崩壊した183ヵ国」、「大使館国際関係史―在外公館の分布で読み解く世界情勢」などなど。珍書好きは珍書好きを呼ぶのかもしれない。

 もう1冊「リクルートという幻想 (中公新書ラクレ)」も、ありがちなリクルート礼賛本じゃないのがいい。著者はもちろんリクルートOBだが、「元リク」のカテゴリーにいれてほしくないという。自己顕示欲や「元リク」ブランドにぶら下がっている人が多いという。「リクルートOBが語る営業術」「リクルート式就職活動の秘訣」的な本がいっぱいあるけど「そんな必要か」と確かに思う。「社員の能力というより、リクルートの営業がシステマチックに行われているから、リクルートが稼いでいる」「リクルートの近年の成長は、自前のビジネスより企業買収による所が大きい」と。
 ちなみに元リク本で一番面白かったのは「リクルート事件・江副浩正の真実 (中公新書ラクレ)」。これもラクレだが、「リクルートNO1が語る営業」みたいな「元リク本」と同列にすべきなのかわからない。

 親会社に振り回されるのはお気の毒ではあるが、それはそれで割りきって、その稼ぎでいい本を作って頂ければよいのでは。

 扶桑社新書は、親会社の上げた反韓反中の陣太鼓で次々と反韓反中本を出しているが、今月は比較的まとも。「韓国人による沈韓論 (扶桑社新書)」の著者は熱狂的な親日的韓国人。目を覆う汚職、地縁・血縁主義、セウォル号の無責任主義を激烈に批判するが、ファクトがあり論理的であり、怒りに任せてではない。だから受けるんだろうなあ。いいなと思うのが、土台に祖国・韓国への愛国心があること。日本人の憎悪や侮蔑混じりの韓国批判は読むに耐えない。本書は祖国への強い恩義、愛国心あっての批判だから「沈韓を憂いながら、この船に今後も残る」と。最終章の在米韓国人批判、「日本への憎しみのために、米国の民主主義を利用している」という。確かに。「狂暴国家中国の正体 (扶桑社新書)」も中国の暴政を受けたモンゴル人の著者で、こちらも日本人の上から目線の反中本にない生々しさがある。

 集英社新書は日本の新旧文化の散逸を危惧する本2題。「ニッポン景観論 (集英社新書)」は、古きよき日本の景観が戦後の原色カラーの看板や工作物、ポストモダン建築で台無しにされているのを嘆くだけでなく、保全やマネタイズに挑もうとする著者の話。なぜ日本観光っていえば、結局日本にしかない景色を見たいからだ。ヴェルサイユやサン・マルコ広場はもちろん、アンコール遺跡やタージマハルですら日本式の「立入禁止」の類のアホ看板はほとんど存在しない。本書は衝撃だった。
 
 古き文化はダメでも、現代の文化はどうかというと、こちらも散逸の危機に瀕しているというのが「誰が「知」を独占するのか-デジタルアーカイブ戦争 (集英社新書)」。放送や映画など、映像分野で諸外国ではアーカイブ化が徐々に進んでいるが、日本ではアーカイブ化を許諾する権利者の追跡が難しいため、ほとんど手付かず。書籍も一度絶版になると、図書館を探して回るしかないのが実情だ。10年経つとベストセラーでも入手困難になってしまう。数百年前の文化も大事だし、数年前の文化も大事かもしれない。どちらとも消えそうになってる国とは……

 現代の日本文化でもう1冊。「なぜ時代劇は滅びるのか (新潮新書)」は、圧倒的な知識と熱量で時代劇・映画を論評する著者が、衰退する時代劇に檄を飛ばす本。一言で言えば、価値観の世界を違和感なく作れる監督・役者が減り、舞台を再現するだけの予算・人材もなくなってきた。テンプレ化の弊害もある。演技・セットとも時代劇を作る技術の両輪が継承されなくなっているというわけだ。時代劇の世界には入り込むための時間が必要だが、若い人に限らず今の視聴者はその時間を惜しむのではないか、とも個人的には思うが。

 そして女性2題。最貧困層から脱出できず、売春で生計を立てる若年女性の聞き取りを書いた「最貧困女子 (幻冬舎新書)」は読むのがきつかった。何というか現代日本の悪徳やら暗黒の一切を押し付けられたような人たちばかりだ。幼少期から虐待やネグレクトの被害を受け続けるのに、誰も助けてくれない。小中学生で家族の縁が切れてしまう。まともな教育も受けられず、「それが当然」と感じてしまう。生活保護に値するのに、行政の手続きもわからない。幼少期の積み上げからか、彼女たちは要領が悪かったり、メンタルを病んでいたり社会で生きる力に乏しい。だが、それを懸命に隠し、自分で何とかしようとしてしまう。心身ともに追い込まれても……。著者が「地獄」といい、取材ができなくなってしまったのも分かる。
 
 一方、同世代の「勝ち組女子」も出産で不満を抱えているというのが「「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)」。トップ層も最下層も活躍できる世代の女性を社会にうまく取り込めていない、日本の現況を感じる。「女性活躍」を銘打つ政府にはうまくやってほしいものだが。

 政治闘争か庶民の生活苦、共産党の横暴モノが多い中国本だが、今月も何冊か読んだ。「知中論 理不尽な国の7つの論理 (星海社新書)」は歴史的心性から中国人の行動を読み解こうという、普通の中国本とは違ったアプローチで読ませる。尖閣の体当たり船長は福建漁民の自力救済の文化に由来するのではないか、「罪は死んでも消えない」中国の善悪論から見ると靖国参拝はA級戦犯への敬意にしか見えないという指摘はユニークだった。「東シナ海の海域は沿岸民の共有物という認識」というのは、昨今のサンゴ騒動を見ると疑問ではあるが。結局どこでも取れる所で捕るという。

 今月一番グサッときたのは「ニッポン景観論」かな。「最貧困女子」「育休世代のジレンマ」も優れた問題提起だと思う。
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