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「見たいテレビ」が今日もない メディアの王様・崩壊の現場




 フジテレビを退社した著者が、昨年以降のテレビのトレンドをテレビマンの視点で書いている。とはいえ、話題の中心は自身の古巣でもあり、一人負け状態が続くフジ。汗も知恵もかかず丸投げしたり過去を模倣したりする局員、番組を守ってくれない上層部、視聴者より「大人の事情」や採算が優先する番組作り、デキる社員が残れない組織など、業界トップである間に大企業病に蝕まれたフジの姿を、元局員だからこそ分かる内在的論理で読み解いている。

 本書は視聴者より自社の都合を優先するフジテレビの体質に厳しい。問題は起こしたくない、金は掛けたくない、でも視聴率は取りたい。だから、人気タレントを集めたスタジオトークや少人数の街ロケ、あるいは過去の番組の縮小リバイバルに限られてしまう。
 フジ前の韓流デモについても、全盛期のフジなら、例えばエガちゃんをデモの中にダイブさせて、怒りを笑いに変えてしまう発想があったはずだ。しかし、ライブドア騒動も自社で報道できない、森元さんが激昂するおいしい画も「日枝会長の友達だから」放送できない、自社制作の映画宣伝をゴリ押しする……など「大人の事情」があまりに多い。制作サイドのやる気も落ちるだろう。
 ちなみに近年、視聴率争いで日テレと競うテレ朝に対しては「フジ同様に、番組編成やタレントの力に拠る所が大きく、数年後には総合制作力に勝る日テレに負ける」と評価している。同様に企画力の高さでテレ東も絶賛している。

 アナウンスの技量や日中の番組編成を論じる後半も面白い。みのもんたと小倉智昭は「神業」だという。18秒半の原稿をきっちり18秒半で読む、高齢者でも心地よい日本語を話す。仕切りもでき、アクの強さもある。メーン視聴者の中高年に受けるので、午後の情報番組は司会者も50,60歳代の方がいい、とも著者は言う。確かに草野さんとか、長寿番組にはおじさんが多い。

 一方で、第3章の報道批判はやや疑問で、著者は現場こそ踏んだが組織に所属していたわけではなく、結構突っ込みどころが多い。フジでは報道記者が情報番組スタッフを見下していたという。社の文化ではないか。某他局では「視聴率もカネも稼げないから報道局のステータスは低い」と聞いたことがある。
 報道と情報系の文化も違う。報道記者に対して「同じ会社なのに会見場に入れてくれない」「情報をくれない」と言うが、信頼関係が築けていなかったのではないか。報道記者、特に警視庁担当は、寝る間も惜しんで取った情報を、今来たアナに「くれ」と言われてもやりたくないだろう。
 また、昔話だが、記者会見に出るアナウンサーってのがまた、質問数が限られてるのに「俺が質問するのは当然」みたいな顔で質問したり、クルーをぞろぞろ連れて広いスペースを占拠したり。会見場にいるキー局のアナねえ……なんて。もちろん著者のことではないが。

 メディア人特有の自慢話も多いけど、それを割り引けば、自身のブレない基準で良し悪しをはっきり書いていて、愚痴にとどまらない説得力がある。競馬実況を担当したスポーツ取材の舞台裏も興味深かった。元テレビ局員のテレビ論としては出色の内容だ。テレビ作りには手間がかかること、その手間を惜しむと番組やさらには局全体が雑になることがよくわかる。
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