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日中食品汚染(文春新書)




 「生活排水が農場に散布されている」など中国の不衛生な食品製造現場を見て回り、「中国産食品は危険だ」と訴える本。しかし、危険性の根拠には科学性がなかったり、著者の願望だったり、参考文献を都合よく引用したりしていて、危険なのはむしろ本書である。

 著者は中国の不潔な食品製造現場を巡り「糞尿まみれ」「添加物まみれ」というのだが、その一方で、危険な生産現場で見た食品が日本に来るのを自分で見ているわけではない。「きっと来ているに違いない。たくさん輸入しているから検査も信じられない」というロジック。まさに「俺が思う真実が現実」。自分の経験は科学に勝ると思っているようだ。

 中でもひどいのは、p127の産科学会報の引用。胎児の先天性障害発生率について、1972年の0.7%が、2006年には1.8%に増えたことを指摘する。これは事実だ。「食品汚染と無関係かといえば否定できるものではないだろう」と著者はいう。しかし、実は増加分の半分は、検査精度の向上で、それまで見つからなかった心疾患をカウントできるようになっただけの話である。さらに、異常のほとんどは不明か遺伝子異常(本書では、後述の因子一覧の最後にしれっと入れているが)によるもので、添加物を含む外的因子(20以上挙げられている〉は全体の5~10%に過ぎない。しかもその中には、梅毒、タバコ、酒、メチル水銀、葉酸欠乏、抗癌剤、農薬など、食品添加物より明らかにヤバそうなものばかり並ぶ。「食品添加物を気にする前に煙草と酒をやめろ」と誰もが思うだろう。

 もう一つ、p212の「サンプル比率のまやかし」で、著者は科学を信用せず、初歩的な数学レベルの誤解をしていることがわかる。日本政府は、年間200万件輸入される中国産食品のうち、10%をサンプル検査し、そのうちの0.47%に違反が見つかっている。著者は「農地ごとに風の吹き方も気温も違う。食品に統計学的な確率論、常識は当てはまらない」。さらに「サンプル比率を20%に上げれば、違反率は1%かそれ以上になるのではないかと思う」と。上がらねーよ。20万件調べて1件見つかる違反物質が違反率上昇に寄与する比率は0.005%。しかも、確率論的に2年調べれば1件見つかる。それを含めての0.47%だろうよと。
 
 ちなみに違反率はイタリア、米国の方が高い。それらの国より中国産は安全ということだ。著者は巻末で、自炊を推奨し「私は家でプロ並みのパスタを作る」というが、小麦こそほぼ米国などからの輸入品で、本書のロジックに従えば、パスタは中国産食品よる危険だ。

 「食べてはいけない」や「食品の裏側」を読んで共感できるならお勧めする。きっと本書を読んで、「中国産は添加物たっぷりで危険。奇形児が生まれる」と思うこと請け合いだ。添加物や中国産がなかった100年前の人たちは、さぞ健康で長寿を全うできたのだろう。本書を批判した「中国猛毒食品のトリック(foocom.net)」を読むと、本書がいかに根拠を欠く主張か理解できる。
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