うなんね新書レビュー ホーム » スポンサー広告 » 新書 » 2月の新書オーバービュー(下)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2月の新書オーバービュー(下)

2月の新書オーバービュー(上)の続き。


 「絶望の裁判所 (講談社現代新書)」は現代新書が最近力を入れている現場の告発系の本。元裁判官が古巣を批判している。読むと、確かに裁判所システムや裁判官という人種がひどいものだと感じる。著者は今の裁判所システムについて「上昇志向しかない裁判官が、早く上手く事件処理すればよく、冤罪よりも全体の秩序維持を再優先にしている組織」と見ている。裁判官らしく、知的できちんとした論理で語っている。
 ただ、著者は「解決には法曹一元化しかない」というが、フランスやドイツは法曹一元ではないが、特段司法制度がいきづまっているとは聞かない。
 そして著者の裁判所へのルサンチマンと、自己陶酔感がくどい。「自分は今川の分家、独立独歩の自由主義者、少数派の地を色濃く引いた一族」「学者でもあり作家でもある自分が」と。最高裁勤務、米国留学、東京地裁裁判長と司法界のエリートコースを著者は確かに歩んでいた。ただ、キャリアの天井が見えるにつれ、偉い人に媚びなければさらには上がれないが、気位が高くてへつらいたくなく、葛藤して心を病んだ、という感じか。
 でも、本書に出てきた泉徳治(と思われる人物)みたいに最高裁判事になるまで司法官僚のネコをかぶり、なったら君子豹変した人物もいるし……でも、地裁裁判長終わったら、現場でゼロから審理できず、高裁長官までひたすら「裁判所システムの奴隷」だからなあ。

 「中国停滞の核心 (文春新書)」は、中国の経済計画である三中全会決定の要点報告と、中国の政治経済の現状をレポートした本。中国の今後については「成長持続」から「崩壊」までと、識者によって意見が色々。著者は「高度成長はしないが、崩壊もしない。経済規模は米国を上回ることはない」としている。著者の論評を交えた三中全会決定の解説は手際よくポイントを押さえていて秀逸。

 病気にまつわる歴史上の30人のエッセーを解説している著者の最新作「医学探偵の歴史事件簿 (岩波新書)」は、神話の人物まで診察している。ヤマトタケルについて、伊吹山で致命傷を受け死に至るまでの様子から、「ギランバレー症候群では?」と。
 また、ビクトリア女王が無痛分娩で出産していたというのに驚いた。麻酔って19世紀から普通の治療として行われていたのかと。ビクトリア女王は9人の子を産んだが、妊娠・出産の負担で、塞ぎがちだったという。
 とはいえ、一番のハイライトはおそらく、著者の叔父が見た昭和天皇の最期だろう。著者の叔父は改元時の侍従長。中のことは一切話さないが、ちらりと漏らす言葉がなかなか深みがある。本より体験の話の方が面白いものだなと感じた。

 「住んでみた、わかった! イスラーム世界 目からウロコのドバイ暮らし6年間 (SB新書)」はイスラーム世界というより、UAE・ドバイの話。著者はドバイで、日本語と空手の講師をしていた。イスラムは女性蔑視じゃないという。UAEでは女性の大学進学率は7割、公務員の過半数も女性。パキスタンはそうでもないから、結局、女性の地位を決めるのは宗教じゃなく、社会の安定感か。
 UAEやアラブ人はイスラム道徳である「身の回りを清潔にする」「勤労すること」を実践する日本に好感を持つ人が多いという。逆に体育や音楽舞踊は、行儀が悪いとされるのでしない。糖尿が多いのもそのため、と。

 ラインから外れた事務系社員のダメっぷりで組織が停滞することを指摘した「劣化するシニア社員 (日経プレミアシリーズ)」は、着眼点はいい。ホワイトカラー職場にいる厄介な「おじさん」。役職経験者だとなお厄介。口を出すだけが自分の仕事だと勘違いしている。動かないどころか、めちゃくちゃな代案を出す。で、若い衆が尻拭いをさせられるという。給料泥棒ならいい方で、人を邪魔して時間まで盗んでいくという文字通りの「老害」。ニフラムを唱えたくなりそうな方々を、本書では分類、対処法を提示している。
 本書でも言うように、役職を外れたにも関わらず、自分が「役職経験者だから」と、一社員に戻ったことを理解せず、上司がいるのにマネジメントしたり、自分で勝手に判断したりする勘違い社員が多いのが日本のダメシニアの特徴ではないか。
 ただ、本書は中身がスカスカ。箇条書きがやたら多く、書き込めるチェックシートが難ページも続くなど、これで900円近いのはコスパが悪すぎる。また、現場の対症療法に甘んじていて内容はよくない。新書で出すなら、もうすこし社会性がほしい。日経プレミアのビジネスものは、自分の体験記で作っちゃってる本が多くて、読んでみると外すケースが結構多いので、注意が必要かなと。


 2月一番面白かったのは、「自治体再建: 原発避難と「移動する村」 (ちくま新書)」。「震災と自治体・住民」という原発災害特有の、まだまだこれからも続く課題で、「避難から次のステップを」とクリアに示した良書だ。今の日本人はほぼ未経験で、どうなるか全くわからない数十年続く災害と避難。本書がもっと話題になってほしい。
スポンサーサイト
コメント
非公開コメント

トラックバック

http://unanne.blog41.fc2.com/tb.php/144-e7d9e8a6

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。