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2月の新書オーバービュー(上)

 2月の本。憲法関連が3冊。でも改憲も下火になってきた感じ。改憲とはつまる所、9条を改正するかどうか。集団的自衛権が解釈で何とかなるなら、莫大な政治リソースを使って変更する必要もないわけで。


 護憲派の渋谷秀樹「憲法への招待 新版 (岩波新書)」は、「個人の尊重」という立憲主義を統治、人権で貫いた解説書。自衛隊を、「国連に拠る集団安全保障体制が確立していない現状で、過渡的な存在として容認する」という解釈をやむなく取る。だから、集団的自衛権については「国連で認めていても、憲法が認めないものは認めない」という立場。

 このほか、刑法の「わいせつ物」規定について、「無修正が容認されないのは、表現の自由の侵害」としているのには同感。「性道徳が乱れても、他人に迷惑がかからなければ法が関与すべきではない」。女性蔑視とか、「見たくない権利」はまた別の論理で動くべきだと。


 改憲派だが、やや慎重なのが舛添要一「憲法改正のオモテとウラ (講談社現代新書)」。自民党の第1次改憲案策定の回顧。第2次案のレベルがあまりに低く「立憲主義に値しない」と批判している。1次案では、人権規定にはあまり手を加えず、自衛隊を憲法上の組織とする9条2項に力を入れている。

 話はそれるが、メディア対策をかなり意識していることが本書で分かる。改憲案策定の初期に、保岡興治のリークでメディアにスクープされたことで大混乱になり、保秘を徹底しなくてはならなくなった。改憲案を発表する会議は新聞の夕刊締切時間の1時半から。そうすれば朝刊回しになり、メディアも焦って取材不足でおかしな記事…ということがない。
 保岡対策で、資料も解禁時刻つきで、印刷ではなくデータをメール添付で送る。こうすればメディアも競争しないし加工しやすい、と。テレビも新聞もイラストレーターでデザイン素材作ってるからねえ。
 今ならともかく、手書きも結構あった10年近く前にこんなきめ細かい配慮ができる、というのが舛添要一の評価が高い理由かとも感じる。こうした配慮も、地方紙を含めた新聞の社会でのアジェンダ設定力の高さを警戒してのようである。

 また、新憲法起草委員長・森喜朗を「偉大なる真空」と呼び、たびたび賛辞を送っているのが目についた。自分を無にして落とし所を見つける。2人の蜜月は、東京五輪にもプラスに作用するのだろう。少し前の回顧録「日本政治のウラのウラ 証言・政界50年」を読んで「調整の天才」と思った印象が強くなった。

 ちなみに、渋谷も舛添も首相公選制について、イスラエルでの失敗を例に否定している。また、直接改憲と関係するわけではないが、石破茂も集団的自衛権について書いている。


 「城を攻める 城を守る (講談社現代新書)」は男気したたる本。「要塞」としての城を語る。マニアックな城が多い。血で血を洗う幕末の水戸藩史が簡潔にまとまっていて、私は全く知らなかったので参考になった。家臣団3400人が30年後、慶應年代には890人になってしまったそうで。せっかく尊王の総本山なのに、有為の人材が壊滅し誰も維新政府に入れなかったという。
 本論の城攻めも面白い。後詰〈援軍〉の重要さを繰り返し語る。戦国武将の多くは、有力領主の盟主的な立場だったため、援軍を出さないと武将への信頼はガタ落ちになる。独裁者信長も、援軍は極力出していた。武田勝頼の凋落のきっかけも、高天神城を見殺しにしたことだった。

 「キャバ嬢の社会学 (星海社新書)」はネットで話題の新鋭ライターのデビュー作。Amazonレビューにもあったけど、社会学というより、フェミニスト視点で見たライターさんのキャバ嬢体験記、か。着目点がよく、文章もうまいとネット記事を見て感じたが、本書の掘り下げ、取材はまだまだ荒いかなと感じた。
 自分のコンプレックスの話が読んでて辛いなあ。女性らしさを是とするか、否定するか。ただ、女性が自分の「女らしさ」をどう受容するか難しい。

 「フォト・ドキュメンタリー 人間の尊厳――いま、この世界の片隅で (岩波新書)」も、女性差別の問題を写真という形で提起している。パキスタンで硫酸をかけられた女性の写真。目を背けたくなる現実を生きている人たちがいる。著者が最後で語るように、誰も見たくなく、見せたくもなく、評価もされない事実こそ、真に報じる意義があるのかもしれない。誰もが発信できる時代だから、なおさらに。

今月の本、まだ続く。長いので、続きは後半へ。
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