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中国複合汚染の正体




6年前に北京を訪問した時、黄土色に霞む空が雨で一転真っ青な美しい空になり、びっくりしたことは今でも忘れない。「ここまでひどいのか」と感じたが、今はもっとひどいようだ。

本書では、その北京のほか、ネットでよく見るカラフルな川が流れる汚染村を訪問し、村人の話を聞いている。こうした汚染村は中国政府の取材規制もあり、訪れることは困難だ。著者も、自治体のトップや公安に捕まったりするが、著者やタクシードライバーの機転で辛くも抜け出している。中国の農村部は、インフラが未整備で、川や地下水を直接使うしかないのだが、カラフルな川や、油の浮く地下水が体に無害なはずもなく、がんや奇病が多発しているという。本書に出てくる村民の多くは、初対面であるにもかかわらず、著者に強い不満、健康不安をぶちまけている。

ネット上の本書書評を見ていると、反中の人達による、「中国ザマア」的な評が多い。しかし、本書をそうした文脈で読むと読み誤る。汚染の深刻化は、中国人自体より共産党独裁という政治システムに由来する、と著者は指摘する。経済振興も環境保護も、立法も司法もすべて共産党の傘下にある。共産党の政策、決定に関与できないし、異議申し立てもできない。日本の公害病はいずれも、司法への異議申し立てが認められ立法行政が動いた。だが、中国ではこれだけ汚染がひどいのに、行政の責任を認める判決は出たことがない。というか、提訴自体がほとんど受理されない。多くの汚染は隠蔽されるか、せいぜい、小金をまいて黙らせるか。NPOで極稀に成功した例もあるが、多くの場合、異議申し立ての手段は暴動くらいしか残されていない。環境問題の克服は民主主義しかないのではないか、という結語が印象に残った。

中国の汚染は、日本も無関係ではない。汚染源になる工場を中国に移転した。汚染を中国が一手に引き受け、環境対策を手抜きした格安な中国製品を、日本を始めとする先進国が享受してきた。日本も環境対策で協力する必要を訴えている。

現代中国悪女列伝 (文春新書 946)」と打ってかわり、本書は地を這うルポ。国際報道って木も見て森も見なければいけない難しさがあるけど、著者は両方できる稀有な人。読ませ方も面白いし、信頼感のあるチャイナウォッチャーだ。ネットやメディアで集めた情報を分析した本は新書、自分の足で取材する本は単行本と書き分けているんだなあと思った。かける手間が違うから、そういう住み分けというか値付けも納得がいく。本書も期待に応える本だった。この内容なら良コスパだし。
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