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2013年の新書オーバービュー

2013年もう終了。今年はamazonレビュー82冊で打ち止めにしました。本は読んでるけど、書くまでのエネルギーがない、というかぶっちゃけて言えば単行本の方が圧倒的に面白かったので、ブログの方で8冊だけど、文章量的には20冊分位書いたような気がします。ともかく、昨年11月未読分から、今年11月までの読んでるものまでで面白かった5冊を挙げてみました。今年の読書の主眼は、「大国に戻りつつある中国」でした。対外的に強硬になっている背景には何があるのか。どのような対策を識者は考えているのか、と考えて読んでいました。


国際政治のダイナミズムを体感できる。なぜ日本が欧米と同じグループに属すべきなのか。米国も孤立したら立ちいかない。本書では、日本は第一次大戦以降、一応世界5大国の最末席に座っている設定だが、今後はどうなるだろうか。


著者は中ロ関係の研究者だが、中公新書の北方領土本が注目を浴び、今は国境問題研究者と目されている。2島でも3島でも戻ってくる方がいいじゃねえか、4島一括を60年叫んでも戻ってこなかった。時間が経てば経つほど不利になるけどそれでいいのか、という。私も早くロシアとの間にケリをつけて、対中戦略に専念した方が合理的かとも思うが。


平和主義って本当に貫き通せるのか。これもまた覚悟を試されている。平和主義は実は2000年前から哲学的な議題だったらしい。いくつかの思考実験で論理的に平和主義の正しさを論証しようとしている。バブル以降、「平和ボケ」は戦後民主主義ディスの基礎用語みたいになってしまったが、「平和ボケ」批判もちょっと陳腐化しているなあ、と読んで感じた。

古代に超巨大道路が全国に通じていたという話。「すべての道はローマに通ず」というが、古代王権は道路で全国支配を確立したという。幅員30メートルの巨大道路を東北から九州に至る全ての国に建設した。その構造、経路が紹介されている。土木技術の高さはいま見ても優れている。そもそもローマのように石で舗装したわけではなく、土を突き固めて舗装しているのが、今もって痕跡が分かるっていうだけでもすごいなと思ってしまった。


かつお節というドメスティックな食材が、戦前から太平洋全域で日本人によって生産されていたという話。タムコーもびっくりなグローバル展開。ずいぶん唐突にタムコーを出しているのは、ちょっと前、タムコーの「このままの日本の教育では世界に通用しない、危ない」という高学歴の親子が海外へ……みたいな話を読んだから。本書によると、戦前、釣りたてのかつおをかつお節にするため、南洋へ飛び出した漁民が多かった。「日本では春から秋までしかかつおが取れない、南洋ならいつでも取れる、ビッグチャンスだ」というわけだ。エリートじゃない日本人も戦前から食える所なら海外でも厭わず出て働いていたグローバル人材だったということ。最近読んで、記憶が鮮明なので若干バイアスがかかってるかもしれない。

ほかに「バチカン近現代史 (中公新書)」などが印象に残った。正直最初の3本はさっと決まったが、残る2冊は悩ましかった。

ちなみに今年のベストレビュー文は「文庫 若き将軍の朝鮮戦争 (草思社文庫)」。人生で一番愛読している本の一冊。文庫化を機に、思うままに書いた。


で、レーベル別。中公新書は33冊読んだ。今年も上記の本以外でも「物語 シンガポールの歴史 (中公新書)」、「エジプト革命 - 軍とムスリム同胞団、そして若者たち (中公新書)」など、各国別の本が読ませた。エジプト革命は非常にレベルの高い報告・分析で、「イスラム圏での民主主義確立の難しさ」まで示唆していて、価値が高いと思う。「大阪―大都市は国家を超えるか (中公新書)」は2012年の発行だが、これも面白くてレビューを書き、サントリー学芸賞も受賞していた。底堅い感じ。

岩波は今年13冊読んだ。申し訳ないがエッセイが多かったこともあり、あまり印象がない。やっぱりリベラルに偏ってて、年々パワーダウンしてる感は否めない。その上、中公でリベラルながらゴリゴリではない公害病告発系の新書を出されるとますます小さくなるリベラルパイの奪い合いじゃないの、と思ったが。ページ数が薄いのも読後感が薄くなってる嫌いはある。

現代新書は20冊。昨年は「復活見えず」と書いていたが、今年は復活の兆しあり、と感じた。暴露系の本にインパクトを感じる。「騎手の一分――競馬界の真実 (講談社現代新書)」が筆頭。藤田には、本書刊行後、「自分の負けが込んできたからだろ」「自分勝手に走ってるだけじゃねーか」という批判もあったが、筋が通っていて、、納得はできる。ま、一緒に仕事したくないタイプではあるが。「アジア系に強く、分析が手堅い。「ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗 (講談社現代新書)」もネットでは注目を浴びていた。毎度毎度のお家騒動で、「ウルトラマンより円谷プロの内紛の方が面白い」という笑い話も聞くくらいだったが、その内情を、元社長が初めて暴露した。不正経理というか横領あり、殿様営業ありと「これじゃあね」と感じた。著者は結局プロを追放され、中国事業も失敗し無一文になってしまった。もう何がなんだかという……それと、NHKアナウンサーを今年辞めた堀潤の「僕がメディアで伝えたいこと (講談社現代新書)」。官僚主義的な国営放送(公共放送と言わないと中の人がキレるらしいが)の内部統制を批判している。日本のメディアは、会社の主張と異なる主張を社員が公言するのを憚られる。日本のメディアは、メディアというより企業、という組織なんだろうなあ、と。何か反原発の自主制作映画を上映しようとしたら、NHKに止められた上、番組を干されて懲戒処分を受けることになったので退職したという。堀潤には賛否両論あるようで、何ともいえないが。そのほか、アジア系の本は分析が手堅く読ませる本が多かった。ジャーナリスティック路線重視に転じていくのかなあ。

それと、全く関係ないけど「死別の悲しみに向き合う─グリーフケアとは何か (講談社現代新書)」は、身内の死別ってそんなにショックなんだと違う意味でびっくりした。どう向き合うかという実践術で、無理に乗り越えなくていいとか。レビューを書きたかった本。しかし、実際直面しないとうまくまとまらないか。それにしても、うちの爺さんなんか連れ合い、つまりおばあちゃんが死んでもあっけらかんとしてたもんなあ。あの神経の図々しさというか図太さがあってこそ、終戦後北朝鮮でサバイブし、100歳超になるのは難しいのか、と北朝鮮で戦後日本人の1割がなくなったというNHKの終戦特番を見て改めて感じたりしたもんだった。

ちくま新書は今年約24冊。意外にも中公くらい読んでいる。社会問題でレベルの高い書き手が多い。「生活保護:知られざる恐怖の現場 (ちくま新書)」など、今年もその強みは健在。経済や国際問題でも読ませる本が多かった。「TVディレクターの演出術: 物事の魅力を引き出す方法 (ちくま新書)」という、テレビのアイデア出しから編集まで、著者流の仕事を解説するというやや異色の本も印象に残った。ただ、クソ本や、買ってみたら淡々としてつまらない本が多いっていうのが難。

新潮新書は13冊、文春新書は18冊。「卵子老化の真実 (文春新書)」で恥ずかしながら卵子が老化するという事実を知った。20歳代で産むというのは、生物学的根拠があってのことだという。文春新書についていえば、話題になった本はあらかた「文藝春秋オピニオン2014年の論点100 (文春MOOK)」に要約が載っているので、ぶっちゃけそれを読んだ方が効率がいい。

光文社新書は13冊。気付けばエッセーばっかり読んでいた。「スローシティ 世界の均質化と闘うイタリアの小さな町 (光文社新書)」とか、旅もの。こうして旅した気になるという。

中公新書ラクレは13冊。オールラウンドな分野で出している。北康利とか中島隆信とか、レベルの高い書き手もいて内容も結構充実している。「文部科学省 - 「三流官庁」の知られざる素顔 (中公新書ラクレ)」が個人的には今年のベスト。たまに外すけど手に取りたくなるレーベルだなと。

新発レーベルで気になったのはポプラ社新書。売れてる書き手が多いが内容は薄い。版組もスカスカで、水増し感が何とも漂う。まだ様子見。

それと、毛生え薬みたいな名前をやめて社名一本で出直してきた小学館新書。著名人が多いが、がちサイエンスもあって、こちらは期待。草野さんの本も面白かった。

ということで今年はこれでお開き。また来年。
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