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5月の新書オーバービュー

富士山世界遺産決定で、新書は8月から関係本がどかっと出てくるのか。既刊でも結構出てはいるけれど。5月の新書、レビューを書こうか書くまいか、考えている間に読み終わってしまった。忘れ切らないうちに気になった本を備忘録的に。

学力幻想 (ちくま新書)」はひどいなあと思う。教育思想の本で、おおよその趣旨は「カリキュラムを民主化せよ」という内容だと推測するが、テクニカルタームが多すぎて衒学的。加えてやたらと二項対立が出てきてアウフヘーベンしたがる。「ラディカルな見えるペタゴジー」。「文化遺産の伝達を重視するエッセンシャリズム」「遂行性のオーナー」もう、まるでわからない。「教育哲学研究」に書くべき内容であって、新書に書くものではない気がする。訳の分からない単語を一般人にひけらかして「シディズンシップの観点からカリキュラムを組み変え、その中心に政治的リテラシーを据える」と、えらい上から目線で市民の教育参加を訴える教育学者より、「くそ教育委員会が」「首長が全部決めればいい」とぶった斬る市長の方がそら受けるってもんだろう。正論かもしれないが、この本は伝わる書き方をしてないし、熱意もない。どこか他人ごとのように学力問題を論じている。誰に伝えたいのか。東大院生か。学校教育は研究室でやってるんじゃない。初等教育の主役はアレントではない。言うまでもなく子どもである。

世界を動かす海賊 (ちくま新書)」は同じちくま、研究者の本でも上記書と打って変わって現場志向の本。ドバイ、ジブチ、シンガポールと、海賊の遊弋するソマリア沖インド洋の現状を書いている。日本船籍の船では日本法が適用されるため、民間人の武装警護ができなかった。幸い日本人の拉致、貨物被害はない。だが、船上は日本でも板子一枚下は異国の海である。これは法律がおかしい。それはそうだ。と思ったら、インド洋上に限り武装警備員の乗船を認める法案が上程された、と書かれていた。なんだ手は打たれていたのか、と思っていたら、参議院で首相問責決議案が出たあおりで廃案になっていた。さすが良識の府。
標高8000メートルを生き抜く 登山の哲学 (NHK出版新書 407)」は、8000m級の山に登り切った初の日本人。雪崩に遭って300メートルも流され全身打撲、一緒に登っていた人は死んだ…そんな大怪我をした山に1年後また登るというのは尋常な神経ではない。図太い。本人もすごい頑固そうな感じ。それだけに山に懸ける思いもあるのだろうが。しかも著者は多くの山に酸素ボンベなしで登っている。頂上付近は酸素が地上の3分の1しかない。3歩5歩進むたびにハアハア、一番深い底にタッチして帰ってくる、素潜りに近い感覚だという。生命感が全くない、宇宙みたいな空間、という8000メートルの感覚が印象に残る。富士山登頂愛好家の人の本を何冊か読んだが、覚悟のほどが違いすぎる。

日本語は「空気」が決める 社会言語学入門 (光文社新書)」は、社会言語学の入門書。言語そのものに特定のイメージ・色がついているという話。確かに。大阪弁を見聞きすると「商人・お笑い」というイメージを持つが、大阪に行けば誰もが大阪弁でしゃべっている。本書中で「大阪弁訳福音書」からパンの奇跡が引用されていたが、確かにイエスとその弟子が番頭と丁稚みたいに掛け合いしてるみたい。慣れとは恐ろしいもので、東京では芸人さんの大阪弁しか聞かないからね。ルターの聖書独語訳も、「ラテン語の神聖さが失われる」という批判があったという。農民の喋る俗語と思われ、人懐っこさがある一方で、荘重さを欠く印象があったはずだという指摘だった。

新・ローマ帝国衰亡史 (岩波新書)」は、ディオクレティアヌスから西ローマ終焉までの歴史。4世紀後半まではそれなりにローマ帝国は力を保っていたが、アドリアノープルの戦い以後、帝国の国境管理が厳格になったにもかかわらず、蛮族の侵入を許し、あっという間に自壊したという。

今月飛び抜けて面白かった本はなかった。「「買い物難民」をなくせ! 消える商店街、孤立する高齢者 (中公新書ラクレ)」は、クセが強すぎてamazonレビューでも批判が多かったが、高齢化・過疎化する日本の一側面をよく切り出せていると思う。東京など大都市にいるといがいと気づかない。地方にいるからこそ見える世界もあるんだなあ。
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