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4月の新書オーバービュー

4月の新書で読んだのは16冊。余り多くなかった。そして、読んだ本の記憶もおおむねなかったりする。

ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム (文春新書)」。なんというか、「神スペックの人っているんだなあ」という。数オリで優秀賞取って、人工知能を研究し、30歳でアカポス、ビブリオバトルを考案し、アカペラのプロデュースをし、あれやこれやと資格を持ち、一生懸命好きな仕事をして、挫折なく人生を走ってる……すごい。また性格も良さそうだなあと。自分で「研究室の出世頭」と言ってもあんまり嫌味がない。だが、人生の不平等感を感じてしまった。これだけ業績上げてたら出身校に戻るんだろうなあ。最初と最後はBAからDrまで著者が過ごした大学をモデルに、プロローグではビブリオバトルを楽しんでいた工学部の研究生が、エピローグでは恩師の退職記念パーティーの場で、パワーエリートとして巣立った姿を描いている。

著者と同時期、隣の校舎にいたであろう配偶者に「懐かしいんじゃない」と渡したら「いらん」と返されてしまった。「人海戦術の工学部には負けないはずだ」という妙な対抗意識を工学部に持ってるらしい。配偶者も何年か前に出席した恩師の退職記念パーティーというのは、三帝大の文化かなあとか、本筋に関係ない所ばかり印象に残った。あ、ちなみに本筋は決して悪くない。

日本の景気は賃金が決める (講談社現代新書)」を読んで、ちょっと最近筆が荒れてる感じがした著者・吉本佳生を見直した。著者は「国債増発で財政破綻」というシナリオは支持しないが、通貨増発は、海外の資源バブルを生むと批判する。結論は帯裏を読めば手っ取り早いが、必要なのは物価、GDPの上昇より、賃金格差を縮めること。低所得層の収入を増やすことが経済政策の主軸にすべきだと訴えている。高所得層の所得増はあまり消費に回らないからだ。物価は全日本人均一に2%上がる訳ではなく、子持ち家庭なんかは10%くらいの上昇感がある……など。

悪い習慣かもと思いつつ、池上彰さんと野村監督の新書が出ると買ってしまう。テレビ新聞を丹念に追っていれば知ってる話が多いが、池上本は現地取材、読者の心をつかむ脇道話、ポイントを外さない所が多くて楽しい。週刊文春連載をまとめた「池上彰のニュースから未来が見える (文春新書)」も、後半で米大統領選の話が紹介されている。全米最初の党員集会が開かれるアイオワ州のフィーバーぶり、毎年恒例のジョークといった脇道のほか、オバマ再選の要因分析という本筋もきちんと現地の声を拾ってて、本書を読むと大体のトピックをおさらいできる。これだけ書いて質を維持しているのも素晴らしい。ま、ニュースの栄養ドリンク的な感じで、後に心に残るというものではないけれど。

産科が危ない 医療崩壊の現場から (角川oneテーマ21)」は、殆どの人が人生で一度は経験する産科の現況の話。著者は慶応医産科教授で前の産婦人科学会長。生殖医療の第一人者だが、大野病院事件の無罪判決、出産助成金の増額、周産期医療の集約化などこの5年間、産婦人科の危機の山を乗り越えた話が中心。近年の医療の中でも、産科は話題が多かった。

また、特に印象に残ったのは、崩壊寸前だった都立病院の産婦人科を、石原知事と直談判して給料を上げることで食い止めた話。患者にしてみれば多少値段が上がっても、手術を一刻も早く受けたい。都内の大規模病院の産科で緊急でない手術をうけるのは、下手をすると1年待ちだそうだが、都立だと3~4ヶ月で受けられることもある。身内に受診した人がいるので、この時、著者が直談判しなかったらと思うと、偉いことになっただろうなあと思う。

生殖医療の倫理的問題にも触れていて、卵子提供で生まれた子どもが提供者の情報を知る権利、アジアの女性が代理出産することへの批判、出生前・着床前診断の「命の選別」への批判など、保守的ではあるが、神の領域に入りつつある産科医療の難しさを感じる。

ビッグデータの覇者たち (講談社現代新書)」は、自分が検索した言葉など自分ではすぐ忘れてしまう。いうなれば、ゴミの山を、検索エンジンの方がすべて記憶しているという話。検索語の間違いなんていうなればゴミ中のゴミだが、それも記憶してて、正しいであろう検索語の結果を表示してくれる。グーグル日本語入力の、途中まで文字を入れると、勝手に予想した言葉を表示してくれるという便利な機能もそうなんだろう。膨大なデータを積み重ねると、ゴミの山が宝の山に生まれ変わるのだそうだ。ブームになったビッグデータのビジネス成功事例をアメリカから紹介している。関係ないけど、著者写真はいかにもアメリカンな笑顔だなあと。斜め20度くらいから撮った満面の笑み。アメリカ政府要人の顔写真でもここまでお手本通りの近影が撮れるのは、オバマとヒラリーくらいじゃないのか、とどんどん関係ない話に。

4月で一番面白かったのは「古代道路の謎―-奈良時代の巨大国家プロジェクト(祥伝社新書316)」。幅30メートル、総延長6000キロ。今の高速道路網に匹敵する巨大インフラが1000年以上前の日本で造られたということ自体知らない人が多いのではないだろうか。強大な権力を今に伝える遺構が全国で見つかっている。本を読むことで得る驚きを感じる好著だった。
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