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11月の新書オーバービュー

あれもこれもレビュー書きたいと思っているうち、気力が萎え、結局書かずじまいという1ヶ月。4本しかまだamazonレビューしてないけど、うーんこれは……。やはり、思ってるだけではダメ。読んだらすぐ書かないと。ということで、印象に残ってるけど時機を逸し、残尿感のある本を中心にメモする。書いててやる気になったら投下しよう。

キヨミズ准教授の法学入門 (星海社新書)」はラノベ風のテイストで、法解釈、ローマ法などえらく基礎法学的な内容を解説している。なかなか面白い。ローマ法の話をラノベで読めるとは思わなかった。本書にもある通り、手軽に手をとれるローマ法の本がない。私は個人的にローマ法に関心があるけど、新書はおろか、有斐閣アルマ的な本もないから、知る機会がないんだなあ。需要もないんだろうけど、あったらいいな。ほかに「体外受精卵の持ち去りは誘拐か窃盗か」という問い。まだ定義がないらしい。人間の命があるんだから、モノや動物じゃない。しかし「ヒト」といえるのか?著者は特別法を作って処理するしかないとしている。君が代斉唱拒否問題も「左巻き教師は憲法で争ってるけど無理筋であって、『労働法から見ると、斉唱拒否でクビってブラックじゃね?』って戦術に変えたらどうか」と提案もしている。星海社新書って中二病臭いというか、意識の高い駄本が多くてバカにしてたけど、本書の内容はレベルが高く、(東大学士助手出身者だから、当然といえば当然か)巻末の参考文献も新書を中心に、しっかりした入門書を掲示している。しかし、学士助手憲法学者がなぜラノベを書くか?わからない。

日本を滅ぼす消費税増税 (講談社現代新書)」は、「不況期の均衡財政で経済が失速している、財政出動で内需を拡大することが必要で消費増税やTPP参加は絶対反対」という主張を展開している。著者作成がほとんどで推測値を含むなど信頼性に不安があるが、多くのデータで論理的に説明しているところに好感を持つ。私は著者の主張にあまり賛同しないが、熱意は感じた。

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)」は、本書発行後、結構話題になっている。大半が数年中に辞めることを見越して、かなり多めに採って、入社後に社員のセレクションをする。また止めさせ方が悪辣で、ハラスメントをガンガンやってうつ病にして退職させるという。恐ろしいことにほかの会社経験がないと、どんなアホな社風でも「こんなものか」と思ってしまいがちだ。うつにならずとも、会社恐怖症になって退職後も社会復帰しづらくなる。困ったことだが、往々にして社員が辛い会社は、消費者としては「いい会社」であることが多い。本書に出てくる衣料品販売大手のUだったかXだったか、あるいは日本海庄やもそうだが、安くてそこそこいい。大した金もない私は、足が向いてしまう。しかし、退職後の健保や生保は税金につけ回すことで成長していると思うと、なんだかヒデエ話だなと思う。著者は、終身雇用の代わりに無茶な業務を押し付けられても正社員は我慢したが、今終身雇用が崩壊しているのに、無茶な業務を押し付ける企業がいいとこ取りしている、これをやめさせるべきだという。一方で、城繁幸は「雇用規制さえ緩和すれば、こんな計画的パワハラなんて不毛な悲劇はなくなるのに」という。どっちも一理あると思う。しかし、終身雇用は当分続くんじゃないのかなあ。政府で押しこみ部屋調査も始まったみたいだけど。きれい事みたいな主張もあるけど、なかなか最近の雇用事情がわかるいい本だった。

監督・選手が変わってもなぜ強い? 北海道日本ハムファイターズのチーム戦略 (光文社新書)」は、乱世のパ・リーグで安定した強さを誇る日本ハムの前球団社長のスポーツチームマネジメント論。球団の収入源について詳しく紹介していたのが面白い。試合、スポンサーの二本柱の他、グッズ、放映権、ファンクラブなどの収入が支える構造。著者はハム社長の前に、セレッソ大阪の社長を務め、その関係でバイエルン・ミュンヘンと、交流があった。ファンクラブなど、先進的なクラブ運営は随分参考になったという。とは言うものの、球場に客を埋めることこそが基本。あの手この手で集客する。とりわけ人口の半分に当たる女性客は未開拓だ。女性デー、ファミリーデーを作り、野球以外でもイベントを作って楽しんでもらうんだという。なるほど、球団経営はすごくソフィストケイトされていて、ファンサービスにも大変な力を入れていることが分かる。ただ、日本ハムはもう大沢親分がいたとしても、監督は多分依頼されない気がする(この大立役者に敬意を表して86番を半永久欠番扱いしているのは知っているが)。昭和臭い、野武士じみた破れかぶれな緊張感がないと、なんか物足りないんだがなあ。

「忠臣蔵」の決算書 (新潮新書)」は、赤穂藩清算後の残金を御家再興と仇討に充当した大石内蔵助一派の帳簿にある支出項目を再検討した本。文字通りの軍資金だ。将軍様に近い坊主に金を渡して再興工作を依頼したり、堀部安兵衛の暴走を抑えるために原惣右衛門を京都から江戸へ派遣する旅費を出したり、江戸在住でカツカツな浪士の家賃を出したり。領収書も添付しているというからしっかりしている。これほど細かい帳簿があったから、史実ないまぜとはいえ、ディティールまでエピソードが充実している物語「忠臣蔵」が上演されているということか。

中国人民解放軍の実力 (ちくま新書)」は、人民解放軍の今の旬といえる「空母」の話から始まる。宇宙、海洋、核戦略について、ひと通り論じているが、私はむしろ後半の汚職ぶりや、高官の二世である太子党の幅のきかせっぷりが興味深かった。解放軍はあくまで「党の軍隊」なので、首相といえど、発言権がないし、司令官と対等の政治委員がいて、政治委員の了解なしに部隊は動かせない。太子党軍人はシンクタンクや対外交流、政治委員など、軍人としての能力より、人脈や政治力が求められるポストに多く配置されているとのこと。装備発注は軍系企業の独占受注のため、質が低く汚職の温床になっているようだ。部内でも、連隊長なら上納金を上官に100万円以上払わないと昇進できないなど、賄賂が横行しているようである。ド厚い秘密のベールに隠されて取材がしにくい人民解放軍やその構成員に、直当りした、よく取材が出来ている本だった。

目についた本は概ねそんなところか。中公の「大阪―大都市は国家を超えるか (中公新書)」は今のところレビューを投下する予定だが、大阪市行政を明治維新以来からの長い射程で捉えていて、また、大阪という一都市から、日本の大都市行政の問題点を考えているのもいい。橋下ブームに収まらない好著だと思うが、どういう風に読み解くか思案している。

今月一番インタレスティングな本は、「国際秩序 - 18世紀ヨーロッパから21世紀アジアへ (中公新書)」だろうか。小難しいけど、「国際政治をとりあえず5大国の合従連衡、盛衰だけで考えてみよう」というアプローチが斬新で、意外と的を射ているなあと感心させられた。国際政治では複雑化・多極化という側面だけが話題になるが、増えてくアクターだけを追っかけてると、本質、大局を見逃すということもあるのだ、ということ。
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