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今年の新書オーバービュー

2012年、残す所あと2日。今年は106冊レビューを書きました。後半ややペースダウンしましたが、大台は超したのでまあよしと。昨年12月から今年11月までの新書で、ベスト5冊を挙げました。順位付けはなかなか難しいので、今年は断念しました。でも、大体書いてる順番通りかな。


「『ゼロリスク社会』の罠」は、安全か危険か、我々に判断する物差しを与えたという意味で好著だと思うが、そのほかにも、「人工より天然のほうが危険」「食べ物は全て化学物質」という、コロンブスの卵的な示唆の多い本だった。


また光文社。「イラン人は面白すぎる!」は核開発、ハマス支援など、「革命輸出国家」「原理主義国家」「ならず者国家」などビンラディン的なイメージの強いイラン人が、毎日ボケをかましながら明るく暮らしていることを、ギャグを交えて紹介する。少年期をイランで過ごしたバックグラウンドと、日本で身につけた西洋的価値観を著者は共有していて、その「常識のズレ」をうまく生かしてネタに仕上げているなあと感心した。著者の営業が増えてればいいけど。


「マヤ文明」はそれまで全く知らなかった世界の扉を開いてくれた本。そもそもマヤ暦2012年世界終末説の話も知らなかったし、スペイン来襲以前に滅亡したように漠然と思っていた。しかし、実は紀元前からスペイン支配後まで2000年、石器だけの高度な文明の命脈が保たれていたというから驚く。7世紀頃に急速に衰退したのは間違いないようだが、そのあたりの謎を突っ込んだ本を読んでみたいなあと思った。


「国土強靭化」を掲げた自民党の政権復帰を予期していたかのような「田中角栄」。民衆の中に入り声を聞き、中央に届けるという、政治、民主主義の原点とは何かみたいなものを感じた本。集票ノルマは厳しいが、公共事業など見返りはきちんと出す。娘は落選したが、「国土強靭化」で、角栄モデルは失われず……か。土地改良事業など、早速予算倍増らしいが。


「残留日本兵」は、終戦後も日本に帰還しなかった1万人の日本兵の「その後」の話。東南アジアが大半だが、混乱が続いていたことが、敗残兵として潜行するのに好都合だった面もある。日本兵の持つ知識や技術、兵士としての練度を見込まれ、エンジニア、医師、傭兵など即戦力として、現地住民に「家、妻つき」でスカウトされた人も多いというのが印象的だ。手に技術があると、いざというときいいなあ。


今年の注目レーベルを適当に振り返ってみると、昨年当たりを連発した中公新書はさすがにパワーダウンして、前半やや息切れ気味だった。その代わり、弟分のラクレが兄を支える健闘で「ルポ - 子どもの無縁社会 (中公新書ラクレ)」「動員の革命 - ソーシャルメディアは何を変えたのか (中公新書ラクレ)」「米国キャンパス「拝金」報告 - これは日本のモデルなのか? (中公新書ラクレ)」などなかなか、スマッシュな本だった。後半ではいい本を出してきて巻き返してきましたが。上の本以外では「国土と日本人 - 災害大国の生き方 (中公新書)」が興味深い。国交省の元事務方No.2である、公共事業推進派の論客が一般向けに書いた本。日本の国土整備の難しさ、整備度の低さが論じられている。国土強靭化のロジックの骨格が述べられており、そのを知る上でも読むべき本。今読んでる最中の「大阪」「梅棹忠夫」「国際秩序」もどれも読み応えがある本で、年内に読み切れないのが残念。

岩波は昨年ほどではないけど、今年も反原発押し。「マルティン・ルター――ことばに生きた改革者 (岩波新書)」は、宗教関係では今年一番面白かった。ルターとは何者か、本書を読めばひと通りのことは語れる。マヤ文明もそうだが、レベルを落とさず概説を楽しく読ませる所に、岩波の良さ、強みはあるのだろう。原発から帰ってこい。単純な反米ではない「勝てないアメリカ――「対テロ戦争」の日常 (岩波新書)」も良かった。

光文社は今年ベストに2冊挙げたが、当たり外れの多いところが難。くらまんのアンチ日銀本やら上念司の陰謀本やら、カツマ御大のダイエット本など、胡散臭い人脈を整理すればレーベルの質はもっと高まるんじゃねとも思うが、アベノミクスでこうした人達が怪気炎を上げて、来年もクソ本を量産するんだろうなあ、きっと。

新潮新書を今年はよく手に取った。40、50分で読めてしまうのでつい読んでしまう。そして、読んでしばらく経つとあらかた忘れる。といいつつも、「震災復興 欺瞞の構図 (新潮新書)」は、その後の復興予算の正当性に一石を投じた好著だった。「精神論ぬきの電力入門 (新潮新書)」は、電力問題をもう少し冷静に見直すきっかけになる本だった。世間の空気から少し引いた所から見る、新潮新書の良さが出ている本だった。犯罪から自衛するノウハウを提供している「犯罪者はどこに目をつけているか (新潮新書)」は「寂しい夜道は20メートル圏内に入ってきた男は危険」と、特に若い女性に役に立つ本だが、あんまり売れる世の中にはなってほしくないというのが正直な所。

あとちくま新書。結構手には取るが、おとなしくて理詰めで論じる印象があって、あんまりパンチがない。それでも、「暴走する地方自治 (ちくま新書)」は今の首長の国政参加をかなり冷ややかに見ていて、その地方へのしっぺ返しを予期している。賛否はわかれるだろうが、賛否がある本もまた良し。「町の忘れもの (ちくま新書)」はなぎら健壱の下町エッセイ。東京新聞の連載のまとめとのことで結構読ませる。

そのほかレーベルは例年通り。現代新書はまだ復活の兆しはない。文春は「聞く力」読まなかったので、なんとも。ほかの本はそこそこ読みましたが。ということで、今年はこれでお開き。
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