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ブログ移転のお知らせ

 思うところがあり、このブログをライブドアに移転しました。移転先「新書を読み倒すブログ」。実際にはAmazonで書ききれなかった新書の月まとめみたいな欄になっていますが、現状のまま月1ペースで書いていきます。
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7月の新書オーバービュー


 著者は名古屋出身で、多くの名古屋本を書いている。「お値打ち」「ツレ」という独特のニュアンスを持つ言葉や、「名古屋によそもんは来てほしくない」感など、名古屋感覚の機微を語る。文体模写の第一人者だけあって、大量の名古屋弁の用例で作文されているが、まあきれい。現地人にも違和感ないだろう。ところでもう小説は書かないのかなあ。




 「戦前の日本人は大艦巨砲主義だった」という、戦後の日本人の前提を、当時の史料から全否定する本。米国に対抗する切り札としての航空戦力を海軍は盛んに宣伝した。ほかの兵器ではさっぱりだったが、お金を集めて飛行機を寄付する「献納運動」も盛んにおこなわれた。民間軍事評論家や退役軍人(余談だが、タモさん的な軍人OBは戦前から結構いたようである……)も「戦艦は金がかかるし、飛行機に対抗できない。これからは制空権だ」と陸海軍以上にはっぱをかけた。大勢の兵士がいて、戦争が身近だった戦前の日本人の軍事リテラシーを侮ってはいけない。「決して戦艦や精神主義一辺倒ではなかった」と著者は強調する。


 今月一番面白かったのは、「ほんとうの憲法: 戦後日本憲法学批判」。すべて賛成はしないが、前文から憲法の平和主義を考える、新しい枠組みとして。

6月の新書オーバービュー

 Amazonに書ききれなかった光文社新書「東京郊外の生存競争が始まった」、中公新書「人口減少時代の土地問題」について。2冊とも、人口減少が土地利用の停滞につながりかねないことを危惧している。時代の雰囲気に沿う本である。



 首都圏住民の都心集中化が進んでいる。都心へ押し寄せる人、郊外住民は人口減少にどう抗うかというテーマ。前半はやや退屈かも。千葉・埼玉・神奈川の住民が「どこに住みたいか」という質問を学歴別・性別に仕切って分析している。千葉・埼玉は東京に出たい人が多いが、神奈川は地元ラブな人が多い。このアンケートを見ていて理解できないのが、みなとみらい人気。最大限見積もって、横浜駅=黄金町=本牧ジャンクションの三角形の内側だと思うし、本当は横浜三塔可視圏内じゃないとみなとみらいじゃないんじゃとも思う。しかも、根岸線の西側はただの住宅街だしなあ。

 職住近接や女性の子育て支援を打ち出している流山市の住民政策が興味深かった。TX効果は大きいだろうが、15年で3万人増というから驚く。きちんとした施策を打てば効果がある。また、住民が趣味の延長で作る「地域の人が集まる店」構想もユニークだ。娯楽、特に夜の娯楽がない街が没個性になる。ニュータウンは単調だ。松戸や所沢といった駅前旗艦店中心の街づくりも、旗艦百貨店が撤退すれば一気に寂れてしまう。東京の衛星都市ではなく、コミュニティで起業していくのだと。
 
 古くは渋谷、吉祥寺、近年では西荻、阿佐ヶ谷といった街は、家賃の安さからエッジの効いた文化の作り手が集まった。今では渋谷も吉祥寺も繁華街になりすぎ、家賃の高さからチェーン店も増え、センスのある人が見ればつまらないとも。個性のある町はむしろ家賃が安い方がいい。住民が担い手になり顔のある店・文化を創出することで、個性的な街を作り来街者、定住者を増やす。結局自力でねという話ではある。

 前半のデータ集はあくまで資料として巻末掲載にして、下流社会、ファスト風土のように事例紹介や著者の提案、過激な売り文句を軸にした本作りにした方がよかったのではないかと個人的には思った。




 こちらは広大な未登記地の弊害を明らかにしている。土地登記は義務ではないことを本書で初めて知った。二束三文の土地では、抵当をつけるか売却時にしか登記しない人が多いという。相続しても名義書き換えを全くしていないため、登記上、明治以来土地所有者が変わっておらず、実際には数百人に所有権が分割継承されている土地もあるという。九州の面積を超える土地の持ち主が分からない。土地の区割りがわからないと道路やインフラの整備もできないため、確定させないといけないが、先進諸国で100%近く終わっているのに日本は半分しか確定されていない。

 持ってるだけで含み益が生じる「土地神話」時代ならいざ知らず、今後、土地を持っていても税金がかかるばかりで、負担になるだけだ。かといって土地は捨てられない。寄贈したくても、国も自治体もムダな土地は引き取りたくない。「ほったらかしとくのが一番」となる。個人的には50年たっても登記されない土地は無主地にしてしまえばいいのではないか、と思うが。


 今月一番……という本はなし。

5月の新書オーバービュー


 光文社新書の表紙じゃない。反則である。プレジデントオンラインで連載してた数年前から「昆虫ブームだし、新書出たら絶対売れるだろうな~」という佐藤藍子的確信を持っていたので、読むのやめようかなとも思っていたのだが、結局読了。ライティングスタイルが独特で、中身はともかく、こち亀「チャーハンライス」、ドラクエよろしく勇者と3人のパーティでバッタ狩りとか、例え話がいちいちアラフォー世代のツボにはまる。

 全くの豆知識だが、バッタとイナゴの違いは、群れると変色するか否か「だけ」だそうである。茶色に変色したバッタの大群は三国志に出てくるくらいの印象しかないが、アフリカでは今でも毎年出現して大被害を与えている。そのため、モーリタニアは全土に監視員を配置して、大群になる前に薬を撒いて全滅できるように警戒しているのだという。

  バッタの大群は駆除が優先されるため、野生でどう行動するかは意外にも知られていない。バッタの大群を観察するため、著者は「大群の兆候」と聞くと砂漠を数百キロ車で走り、しばしば野営する。だが、本書の主役であるバッタは著者のいる年に限って出てこない。ハリネズミ、ゴミムシダマシ、サソリなど前半はバッタでないが、クライマックス、狂気と言っていいバッタ愛、研究熱が思う存分語られている。京大総長に「ありがとうございました」となぜか面接で言われてしまう理由もわかる気がする。

 モーリタニアという日本人にほとんど馴染みのない国で、かつ著者は、給料を騙し取られているにもかかわらず、相棒のドライバーと実に仲が良い。運転手なのに、著者の実験道具を作ってやったり、観察助手になったり、砂漠で野営する時の飯を作ってくれたり。ぶよぶよスパゲッティやら新鮮なヤギを使った脂ギトギトの肉飯やら、シンプルだけど満天の星空の下で食うからきっとうまそう。本書に女児を肥えさせるモーリタニア独特の風習を嫌い、妻と離婚してしまった……というプライベートな愚痴まで著者にしている。科学者のエッセイというより、世界ウルルン滞在記のノリだが、本の厚みを感じさせない楽しい研究記録だ。




 平安後期から筆を起こし、幕末までの武士道のありようを簡単にまとめた本。平安期、武士は地方の荒れた無主地を開拓するデベロッパーで、所領を守るために近隣の武士と一戦交えることも多かったという。「一騎打ちは、互いが磨いた武芸を見せ合うことで実力を比べ、実戦に持ち込まないための工夫」という説明が腑に落ちた。

 武士道は盲従的な倫理ではない。殿が間違っていたら諫言し、報復も顧みず君主権の剥奪、いわゆる主君押込もした。だから江戸時代に庶民階級まで武士道倫理が広まり、同業者間への絶対的な相互信頼から米の先物取引まで生んだ。

 幕末、攘夷派の方がむしろ欧米の技術習得に熱心だったという話に驚く。「薩英戦争は、最新鋭のペクサン砲を旗艦に命中させた薩摩が勝ち、英艦隊は逃げ帰った」「長州相手に米英仏蘭が束になってかかってきた」というのも意外だった。




 釜山の慰安婦像設置イベントに「何様のつもりか」と、かなり韓国に手厳しい朝日のソウル支局長ルポ。外交・安保のウエイトが大きい。著者は韓国の外交力の低下を懸念している。韓国のジャパンスクールは世界一日本を理解する人々だったといい、役所の要職も占めた。政財界にも日本語ができる要人が多く、日韓会談は日本語で微妙なニュアンスを理解しあい、カラオケで日本の歌を放吟した。これが今や、抗議文を読み上げるだけ。また、米中でなければ出世できないし、家庭重視の女性外交官が増え、「夜の社交」を含めた地味なネゴがしにくくなったという。

 では、対米中関係がうまくいっているかというと、決してそんなこともない。在韓米軍は拠点をソウルから大幅に南に下げた。38度線に張り付けていたが、今後は主力部隊はローテーション、海外での演習にも参加させるという。中国もTHAAD配備で関係はこじれている。大量破壊兵器のほか、平壌防空、特殊部隊、「ソウル火の海」に特化した北朝鮮軍に有効な対策をなかなか打ち出せず、核の脅威が高まるたびに「核武装論」が沸き上がる韓国の軍事分析も興味深い。

 同窓会社会、陳情政治、「失業したらフライドチキン開業」の経済など、生存競争の厳しい韓国社会を、豊富なエピソードと韓国人のため息交じりのセリフで描いている。朝日の韓国論調というと、社説まわりで能天気な「韓日」友好論を書いている人を想起するネット民も多いが、本書には全くない。リアリズムで貫かれている。本紙で書けばいいのにと思うが、むしろ本紙では書きにくいのかもしれない。


 今月一番面白かったのは、光文社新書の「効かない健康食品 危ない自然・天然」。最近、自炊が増え、身近な食品衛生に関心を持ったこともあるが、「作り置きが危ない」「塩分入れすぎは危ない」など、根拠に基づいたメッセージがわかりやすい。

4月の新書オーバービュー



 2,3年前に流行した「貧困女子の風俗ワーカー化」「ひたすらかわいそうな風俗ワーカーのライフヒストリー」といったストーリーの「風俗嬢かわいそう」論に、5000人を超す風俗嬢の相談に応じた経験から異を唱えている。

 出退勤自由で平均30~40万円稼げる風俗は、昼間の仕事に比べかなり拘束が緩い。風俗店も凄まじい額の求人広告を投じているので、以前に比べると手軽に入れる業種になり「堕ちた」感覚はない。「金のため嫌々やっている」「強制的に放り込まれた」風俗嬢は主流ではない。
 
 著者は「本人がやりたくてやっているのであれば、無理に辞めさせるべきでもない」という。むしろ、出口が問題だという。風俗嬢の多くは40歳前後で引退していく。だが、昼間の職業に戻ろうにも40歳までキャリアの積み上げがないどころか隠したい過去でしかないから、転職しようにも出る先がない。そこからが本当に「堕ちていく」。風俗後の出口を作る方が、女性支援になるとしている。

 切り口の新しい、著者の主張は納得できたものの、本書には「このように転身が行われた」というストーリーのある事例がなく、出口論が繰り返される印象があった。本としてはやや物足りない感じがした。




 もう1冊、光文社新書。ある変数に介入して変えた場合と変えない場合、どのような効果(影響)があるかを比較するための分析手法を、実際の実験・分析を使いながら初心者向けに教えている。

 調査では著者が行った「電力料金が上がると電力消費が減る」社会実験が行われている。料金が上がると消費は減るようだが、ここで驚いたのが、被験者の属性が数十項目列挙され、上がる方と上がらない方で因子に偏りがないように調査されている。料金が上がる方で大卒が多いと、料金に関係なく、もともとエコに気を使っているかもしれないし、どちらか一方が収入が多い群だと、料金などお構いなしに電気つけっぱなしにするかもしれない。

 選挙の時期にtwitterでよく、『開票率5%でなんで当確打てるんだいと聞いたら、秋山仁が「味噌汁作って味見、あなた丼鉢でぐーーっと飲む?」って』という小話が出てきて、うまいなあと思いつつ、味噌汁作りが下手な私は「おたまの味噌玉落としたら、味見にならねえ」と思っていた。やはり、味噌玉を落とさないように溶く努力を統計学者は一生懸命してるんだな、と妙に納得した。



 軍事における機動のあり方、作戦の立て方を解説した本。攻勢時、どのように迂回、包囲を取るか実戦を例に紹介している。ナポレオンの機動力を生かした各個撃破は革新的であったが、大規模戦役になるとナポレオンの目が行き届かなくなってしまった。また、インパール作戦における当初の進撃は、「日本軍が分散し補給が届かなくなった時期と場所で、英軍が一丸となって各個撃破する英国の必勝策に乗せられただけ」という、外線作戦の失敗事例として挙げられている。


 今月一番面白かった本は、中公の「自民党」。「安倍1強は有権者の消極的選択であり、支持基盤は長期的には一貫して弱まっているが、他党と比べ政治的資源が豊富なのは今後も変わらない」とする。政策過程・人事の変遷から読み取る総裁への権限集中、党員や集金額から支持基盤の分析は実に精緻。都議選での都民ファースト圧勝から見ても、実証された印象だ。
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